LESSON 01

具体的な言葉と抽象的な言葉

具体的な言葉と抽象的な言葉:誤った言い換えを直す

具体例を主張と取り違える、一つの例で決める、抽象化しすぎる、具体と抽象の段を飛ばすという四つの型で、具体と抽象の読みの誤りを見抜いて直します。

具体的な言葉と抽象的な言葉:誤った言い換えを直す

このレッスンの役割

具体と抽象の読み違いは、読解の設問で「筆者の主張」を取り違える形で現れます。ここでは、よく起きる誤りを四つの型に分け、どの段階で崩れたかを見つけて直します。

今回の中心技能は、誤答を見て「具体例を主張と取り違えた」「一つの例で決めた」「抽象化しすぎた」「段を飛ばした」のどれかを言い、直せることです。目安時間は8分です。

今日の問い

次の文章の筆者の主張を、ある人は「電車で席をゆずるべきだ」と答えました。どこで誤ったのでしょうか。

人は困っている人を見ると、自然に手を差し伸べる。たとえば、重い荷物を持つ高齢者に声をかけたり、電車で席をゆずったりする。こうした親切は、見返りを求めない行為だ。

「席をゆずる」は「たとえば」のあとの具体例です。主張は「こうした」のあとの「親切は見返りを求めない行為だ」。具体例を主張と取り違えた型①です。

誤りの四つの型

型 起きていること 例 直し方
① 具体例を主張と取り違える 「たとえば」のあとを答えにする 主張=席をゆずるべき 「こうした」「つまり」のあとを見る
② 一つの例で決める 複数の例のうち一つだけで共通点を出す 余白=描かない部分 二つ以上の例に共通するものを取る
③ 抽象化しすぎる 共通点を広げすぎて、何にでも当てはまる言葉にする 誠実さ=良いこと 例が全部当てはまり、かつ他と区別できる言葉に
④ 段を飛ばす 具体と抽象の間の段を飛ばして結びつける りんご→価値 間の段(果物→食べ物)を補う

型①を直す:合図で主張を見つける

合図 位置
たとえば、具体的には 具体例(主張ではない)
こうした、このように、つまり まとめ(主張の候補)
〜べきだ、〜が必要だ、〜と考える 主張の文末

記述で「筆者の主張」を問われたら、「たとえば」の中からは選びません。

型②を直す:二つ以上の例

彼女は視野が広い。自分の専門以外の本も読むし、異なる世代の人とも話す。

「視野が広い=本を読む」では一つの例を写しただけです。二つの例に共通するのは「自分の範囲の外にも目を向ける」。これが意味です。

型③を直す:ちょうどよい抽象度

例 抽象化しすぎ ちょうどよい
あいさつ、届ける、時間を守る 良いこと 当たり前のことをきちんと続ける(誠実)
描かない部分、止めた瞬間、言わない部分 芸術 何もしない部分に意味を持たせる(余白)
本を読む、世代の違う人と話す 行動 自分の範囲の外に目を向ける(視野が広い)

「良いこと」「芸術」では、他の例と区別できません。例を全部説明でき、かつ他と区別できる言葉を選びます。

型④を直す:段を補う

彼は毎朝、近所のごみを拾う。これは地域社会の持続可能性に関わる行為だ。

「ごみを拾う」から「持続可能性」へは段が飛んでいます。間に「地域の環境を保つ」「住民が自分で地域を支える」という段を補うと、つながります。記述で段を飛ばすと、「なぜそう言えるのか」が伝わりません。

例題:どの型か

「余白を大切にする」の意味を「水墨画で描かない部分があること」と答えた。

型②。三つの例の一つを写しただけ。共通点「何もしない部分が意味を持つ」まで抽象化します。

「誠実さ」の意味を「人として大切なこと」と答えた。

型③。何にでも当てはまる言葉です。「当たり前のことをきちんと続けること」と例に即して直します。

よくある間違い

具体例が印象に残り、それを主張だと思う

具体例は分かりやすいので記憶に残ります。しかし主張は抽象の側です。「こうした」を探します。

共通点を「大切」「良い」で済ませる

評価の言葉は抽象化しすぎです。例の中身に即した性質を言います。

段を飛ばして「深い読み」をしたつもりになる

飛ばした段は読者に伝わりません。間を補って初めて根拠になります。

自分で確かめよう

確認1:「筆者の主張」を「たとえば」の中から選んだ誤りの型と直し方

型①。「こうした」「つまり」のあとのまとめを主張として選びます。

確認2:「誠実さ=良いこと」の誤りの型と直し方

型③。例を全部説明でき、他と区別できる「当たり前のことをきちんと続けること」に直します。

確認3:共通点を出すのに必要な例の数

二つ以上です。一つでは共通点が取れません。

まとめと次の一歩

誤りは、具体例を主張と取り違える、一つの例で決める、抽象化しすぎる、段を飛ばす、の四つに分けられます。合図で主張を見つける、二つ以上の例で共通点を取る、ちょうどよい抽象度にする、段を補う、で直せます。

次のレッスンでは、初見の論説文と入試問題で、具体と抽象の読みを通して使います。

クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。

UNDERSTANDING CHECK

理解チェック:具体と抽象の誤りの型

70% 合格ライン
  1. 設問 0
    「たとえば、電車で席をゆずったりする。こうした親切は見返りを求めない行為だ」の筆者の主張を「席をゆずるべきだ」とした誤りは、どの型ですか。
  2. 設問 1
    「誠実さ」の意味を「良いこと」と答えた誤りは、どの型ですか。
  3. 設問 2
    「余白を大切にする」を「水墨画で描かない部分があること」と答えた誤りは、どの型ですか。
  4. 設問 3
    「ごみを拾う」から「持続可能性」へ一気に結びつけた誤りの直し方はどれですか。
  5. 設問 4
    「筆者の主張」を探すときに見る合図として適切なのはどれですか。

まずは自分で選んでみましょう。採点・学習履歴への記録は、回答APIとの連携時に追加します。