尊敬語と謙譲語を見分けよう:不自然な表現を直す
このレッスンの役割
尊敬語と謙譲語の取り違えは、向きを逆にする、「〜に」の人を動作主と見なす、主語の交代を見落とす、「くださる/いただく」を取り違える、の四つに分けられます。ここでは、それぞれを型に分け、直します。
今回の中心技能は、尊敬語と謙譲語が逆になった文を見て四つの型のどれかを言い、直せることです。目安時間は8分です。
今日の問い
(生徒が先生に)「先生が伺ったとおり、私がご覧になって、お客様に差し上げていただきました。」
三か所が逆です。「先生が伺った」→ 動作主が先生なので「おっしゃった」(尊敬語)。「私がご覧になって」→ 動作主が私なので「拝見して」(謙譲語)。「差し上げていただきました」→「差し上げる」は私が渡す動作、「いただく」は私がもらう動作で、両方を重ねると意味が通らない。「差し上げました」。
誤りの四つの型
| 型 | 起きていること | 例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 向きの逆転 | 相手の動作に謙譲語、自分の動作に尊敬語 | 先生が伺った、私がご覧になる | 動作主を確かめ、対の表で反対側に |
| ② 「〜に」を動作主に | 向かう相手を動作主と見なす | 先生に私がいらっしゃる | 「〜に」は向かう相手。動作主は「〜が」 |
| ③ 主語の交代の見落とし | 最初の主語を全部の動詞に当てる | 先生がくださった本を、先生が拝読した | 動詞ごとに動作主を書く |
| ④ くださる/いただくの取り違え | 主語と形が合わない | 私が教えてくださった、先生が教えていただいた | 主語が相手なら「くださる」、私なら「いただく」 |
型①を直す:対の表で反対側へ
| 誤り | 動作主 | 直し |
|---|---|---|
| 先生が伺った | 先生 | 先生がおっしゃった(「聞く」の意味なら「お聞きになった」) |
| 私がご覧になる | 私 | 私が拝見する |
| 先生が拝読した | 先生 | 先生がお読みになった |
| 私がいらっしゃる | 私 | 私が伺う/参る |
| お客様がいただく | お客様 | お客様が召し上がる |
型②を直す:「〜が」と「〜に」
| 文 | 〜が(動作主) | 〜に(向かう相手) | 形 |
|---|---|---|---|
| 私が先生に本を渡す | 私 | 先生 | お渡しする(謙譲) |
| 先生が私に本を渡す | 先生 | 私 | お渡しになる、渡してくださる(尊敬) |
「先生に」があるからといって尊敬語にはなりません。動作主は「〜が」。
型③を直す:動詞ごとに
| 文 | 動詞 | 動作主 |
|---|---|---|
| 先生がくださった本を、私が拝読した | くださる | 先生 |
| 拝読する | 私 |
一つ目の動作主「先生」を「拝読」にまで当てると「先生が拝読した」になり、型①の誤りを生みます。
型④を直す:主語で選ぶ
| 主語 | 形 | 例 |
|---|---|---|
| 相手(先生が) | 〜てくださる | 先生が教えてくださった |
| 私(私が) | 〜ていただく | 私が(先生に)教えていただいた |
「私が教えてくださった」は、私が相手に教えたことになり、しかも自分を高めています。「先生が教えていただいた」は、先生が誰かにもらった意味になります。
例題:どの型か
(生徒が先生に)「先生に私がいらっしゃって、資料をいただきました。」
型②①。「先生に」を見て「いらっしゃる」にしたが、動作主は私。「先生のところに私が伺って、資料をいただきました。」
「先生が私の作文を読んでいただきました。」
型④。主語が先生なら「読んでくださいました」。主語を私にするなら「私は先生に作文を読んでいただきました」。
よくある間違い
目上の名前が文にあれば尊敬語だと思う
名前の位置が「〜に」なら動作主ではありません。
「くださる」も「いただく」も丁寧だから同じだと思う
主語が違います。混ぜると向きが崩れます。
一つの文は一つの主語だと思う
「〜た本を」「〜たとき」で主語は交代します。
自分で確かめよう
確認1:「先生が伺ったとおり」の誤りの型と直し方
型①(向きの逆転)。「先生がおっしゃったとおり」。
確認2:「先生が私の作文を読んでいただきました」の直し方
「先生が私の作文を読んでくださいました」(主語が先生なら「くださる」)。
確認3:「先生に私がいらっしゃって」で動作主は誰ですか
私(「先生に」は向かう相手)。「伺って」。
まとめと次の一歩
誤りは、向きの逆転、「〜に」を動作主に、主語の交代の見落とし、くださる/いただくの取り違え、の四つに分けられます。対の表、「〜が」の確認、動詞ごとの動作主、主語で選ぶ、で直せます。
次のレッスンでは、会話・面接・入試形式の問題で、尊敬語と謙譲語の見分けを通して使います。
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