特別な形の敬語:動作主と向きで選ぶ
このレッスンの役割
前のレッスンで、特別な形を五つのグループで整理しました。ここでは、文中の動詞を特別な形に直すとき、グループの特定から場面による選択までを一つの手順に決めます。
今回の中心技能は、「動詞のグループを決める → 動作主で尊敬語か謙譲語かを決める → 表から特別な形を取り出す → 場面で複数の形から選ぶ」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
(受付で係員が客に)お客様は何時に来ますか。
手順で直します。グループ:移動(来る)。動作主:お客様 → 尊敬語。表:いらっしゃる、おいでになる、お越しになる、お見えになる。場面:受付で客の到着を尋ねるので「お越しになる」「お見えになる」が自然。「お客様は何時にお越しになりますか。」
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 動詞のグループを決める | 来る → 移動 |
| 2 | 動作主で尊敬語か謙譲語かを決める | お客様 → 尊敬語 |
| 3 | 表から特別な形を取り出す | いらっしゃる、おいでになる、お越しになる、お見えになる |
| 4 | 場面で複数の形から選ぶ | 到着 → お越しになる |
段階4:複数の形の使い分け
| 動詞 | 形 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 来る(尊敬) | いらっしゃる | 一般(最も広い) |
| お越しになる | 客の到着、案内 | |
| お見えになる | 到着の報告(「お見えになりました」) | |
| 言う(謙譲) | 申す | 改まった自己紹介、聞き手に(私は〜と申します) |
| 申し上げる | 相手に向けて言う(先生に申し上げる) | |
| 行く(謙譲) | 参る | 相手なし、または一般 |
| 伺う | 相手のところへ | |
| 聞く(謙譲) | 伺う | 一般 |
| 拝聴する | 講演・話を聞く(改まり) | |
| 知っている(謙譲) | 存じる | 事について |
| 存じ上げる | 人について |
例題:段階ごとに
(生徒が先生に)私の名前は田中と言います。先生のことは前から知っています。
| 動詞 | 段階1 | 段階2 | 段階3 | 段階4 |
|---|---|---|---|---|
| 言う | 発言 | 私 → 謙譲 | 申す、申し上げる | 自己紹介 → 申します |
| 知っている | 知覚 | 私 → 謙譲 | 存じる、存じ上げる | 人(先生)→ 存じ上げて |
「私の名前は田中と申します。先生のことは前から存じ上げています。」
例題:一語で複数を受け持つ語の逆引き
「伺う」を使って、次の三つの意味の文を作りなさい。
| 意味 | 文 |
|---|---|
| 行く | 明日、先生の研究室に伺います |
| 聞く | 先生のご意見を伺います |
| 尋ねる | 一つ伺ってもよろしいでしょうか |
設問「『伺う』はどの意味か」は、文脈で決めます。
「〜ていただく」「〜てくださる」との組み合わせ
| 動詞 | 特別な形 | 〜てくださる/〜ていただく |
|---|---|---|
| 来る | いらっしゃる | 来てくださる、来ていただく、お越しいただく |
| 教える | ― | 教えてくださる、教えていただく |
| 見る | ご覧になる、拝見する | 見てくださる、見ていただく |
特別な形がない動詞(教える、手伝う)は「〜てくださる/〜ていただく」で敬語にします。
よくある間違い
段階1でグループを誤る
「伺う」を「見る」に使う(×先生の絵を伺う)。「見る」は知覚で「拝見する」。
段階4で場面を見ずに一つの形で通す
「お客様がいらっしゃいました」も正しいですが、到着の報告は「お見えになりました」が自然です。
「申す」と「申し上げる」を同じに使う
「先生に申します」は不自然。相手に向けるなら「申し上げます」。
自分で確かめよう
確認1:「先生が昼食を食べる」を四段階で
存在行為(食べる)→ 先生 → 尊敬 → 召し上がる → 一つしかないので「召し上がる」。
確認2:「私は田中と言います」の「言う」の特別な形
申します(自己紹介は「申す」)。
確認3:「先生のことは知っています」の謙譲語
存じ上げています(人について)。
まとめと次の一歩
手順は、グループを決める、動作主で尊敬か謙譲か、表から取り出す、場面で選ぶ、の四段階です。「申す/申し上げる」「参る/伺う」「存じる/存じ上げる」は場面と対象で選びます。
次のレッスンでは、特別な形でよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。