不自然な敬語を直そう:人物関係と働きをつかむ
このレッスンの役割
ここまでの七つのセクションで、二十以上の誤りの型を学びました。入試の「誤りを直し、理由を説明せよ」に答えるには、それらを少数の観点にまとめておく必要があります。ここでは、敬語の不自然さを四つの観点に整理し、「なぜ不自然か」を一言で言える枠組みをつかみます。
今回の中心技能は、不自然な敬語を見て「二重敬語」「逆転」「過剰」「不足」のどれかを言い、理由を一文で説明できることです。目安時間は8分です。
今日の問い
(店員が客に)「お客様がおっしゃられたお品物は、ただいまお持ちしてまいりますので、少々お待ちしてください。」
三つの観点で不自然です。「おっしゃられた」は二重敬語。「お持ちしてまいります」は「お持ちする」と「まいる」の重ねで過剰(「お持ちします」)。「お待ちしてください」は客の動作に「お〜する」を混ぜた逆転(「お待ちください」)。
四つの観点
| 観点 | 内容 | 例 | 一言の理由 |
|---|---|---|---|
| ① 二重敬語 | 一つの動詞に同じ種類の敬語を二つ重ねる | おっしゃられる、ご覧になられる、お伺いする | 「敬語が重なっている」 |
| ② 逆転 | 相手の動作を低める、自分の動作を高める | 先生が申す、私がいらっしゃる、お書きしてください | 「向きが逆」 |
| ③ 過剰 | 必要以上の丁寧さ、付かない語に「お」、謙譲語の重ね | お机、お持ちしてまいる、させていただく の連発 | 「丁寧すぎて不自然」 |
| ④ 不足 | 目上の動作が丁寧語止まり、くだけた語 | 先生が言いました、先生に了解です | 「敬語が足りない」 |
観点①:二重敬語の見つけ方
| 手掛かり | 例 |
|---|---|
| 特別な形+「れる・られる」 | おっしゃられる、いらっしゃられる |
| 「お〜になる」+「れる・られる」 | お読みになられる |
| 「お」+特別な形の謙譲語 | お伺いする、お目にかからせていただく |
ただし、「お伺いする」「お召し上がりになる」は慣用として広く使われます。入試で「正しく直せ」なら、単純な形(伺う、召し上がる)にします。
観点②:逆転の見つけ方
| 手掛かり | 例 |
|---|---|
| 相手側の動作に謙譲語 | 先生が申した、お客様が参った |
| 自分側の動作に尊敬語 | 私がご覧になる、母がおっしゃる |
| 「お〜して」+「ください」 | お書きしてください |
動作主と向きの四段階で確かめます。
観点③:過剰の見つけ方
| 手掛かり | 例 | 直し |
|---|---|---|
| 「お」が付かない語に「お」 | お机、おビール、お会社 | 机、ビール、会社(御社) |
| 謙譲語の重ね | お持ちしてまいります | お持ちします |
| 「させていただく」の連発 | 読ませていただきます、書かせていただきます | 読みます、拝読します |
| 友人への過剰な敬語 | ノートを拝借できますでしょうか | ノート貸して |
「させていただく」は、相手の許可を得て行う動作にだけ使います(休ませていただく)。許可と関係ない動作に付けると過剰です。
観点④:不足の見つけ方
| 手掛かり | 例 | 直し |
|---|---|---|
| 目上の動作が丁寧語止まり | 先生が言いました | 先生がおっしゃいました |
| 目上への返事がくだけている | 了解です、分かった | 承知しました、かしこまりました |
| 目上の物に敬語がない | 先生の意見 | 先生のご意見 |
例題:観点を言う
「校長先生がお話しになられました。」
観点①二重敬語。「お話しになりました」。
「私の意見を先生にご覧になっていただきました。」
観点②逆転ではなく、「ご覧になる」(尊敬)+「いただく」(謙譲)の組み合わせで、動作主が先生なので「ご覧いただきました」が自然。重ねとしては観点③過剰。
よくある間違い
丁寧にすれば誤りは減ると思う
過剰(観点③)と二重敬語(観点①)は、丁寧にしようとして起きます。
「させていただく」を万能だと思う
許可を得る動作にだけ使います。「発表させていただきます」は、許可がある場面なら可、独り言のような場面では「発表します」。
観点を言わずに直すだけで終わる
入試は理由を求めます。観点を一言で言います。
自分で確かめよう
確認1:敬語の不自然さの四つの観点
二重敬語、逆転、過剰、不足。
確認2:「おっしゃられた」の観点と一言の理由
二重敬語。「敬語が重なっている」。
確認3:「させていただく」を使ってよい条件
相手の許可を得て行う動作のとき。
まとめと次の一歩
不自然な敬語は、二重敬語・逆転・過剰・不足の四つの観点で説明できます。それぞれ「重なっている」「向きが逆」「丁寧すぎる」「足りない」の一言で理由を言います。
次のレッスンでは、一つの文を四つの観点で順に点検して直す手順を一行ずつ使えるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。