謙譲語の基本:人物関係と働きをつかむ
このレッスンの役割
謙譲語は、自分側の動作を低めることで、その動作が向かう相手を立てます。尊敬語が「相手の動作を上げる」のに対し、謙譲語は「自分の動作を下げる」。向きが逆です。ここでは、謙譲語の働きと三つの作り方、使う条件をつかみます。
今回の中心技能は、謙譲語の記号が「自分↓」であることを理解し、「動作が目上に向かう」という条件を確かめてから謙譲語を使えることです。目安時間は8分です。
今日の問い
私が先生に本を渡す。
動作主は私(自分側)、動作は先生(目上)に向かっています。自分の動作を低めて「お渡しする」。「私が先生に本をお渡しします」。これが謙譲語です。
一方、「私が公園を走る」は、動作が誰にも向かわないので謙譲語にできません。「走ります」(丁寧語)で終わりです。
謙譲語の定義
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 働き | 自分側の動作を低め、動作の向かう相手を立てる |
| 記号 | 自分↓ |
| 動作主 | 自分側(私、私の家族、自分の会社・学校の人) |
| 条件 | 動作が目上の人に向かう(渡す、聞く、会う、訪ねる) |
「向かう相手」がない動作(走る、寝る、勉強する)は、謙譲語にしません。
三つの作り方
| 作り方 | 形 | 例 |
|---|---|---|
| ① 特別な形 | 動詞ごとに決まった語 | 言う→申す・申し上げる、行く→伺う・参る、見る→拝見する |
| ② お(ご)〜する | お+連用形+する | 渡す→お渡しする、聞く→お聞きする、説明する→ご説明する |
| ③ 〜ていただく | 相手の動作を受ける形 | 教えてもらう→教えていただく |
特別な形の主な語(尊敬語と対で)
| 普通 | 尊敬語(相手↑) | 謙譲語(自分↓) |
|---|---|---|
| 言う | おっしゃる | 申す、申し上げる |
| 行く | いらっしゃる | 伺う、参る |
| 来る | いらっしゃる | 参る |
| いる | いらっしゃる | おる |
| 見る | ご覧になる | 拝見する |
| 聞く | お聞きになる | 伺う、拝聴する |
| 食べる | 召し上がる | いただく |
| する | なさる | いたす |
| 知っている | ご存じだ | 存じている、存じ上げている |
| もらう | (お受け取りになる) | いただく |
| 会う | お会いになる | お目にかかる |
| 与える | くださる | 差し上げる |
対で覚えると、「いらっしゃる(相手)/伺う(自分)」のように向きを取り違えなくなります。
「向かう相手」の二種類
| 種類 | 例 | 説明 |
|---|---|---|
| 相手に向かう動作 | 伺う、申し上げる、お渡しする、お目にかかる | 相手がいないと使えない |
| 聞き手に対して改まる動作 | 参る、申す、いたす、おる | 相手がいなくても聞き手への改まりとして使える |
「参る」「申す」「いたす」「おる」は、「私は明日東京へ参ります」のように、向かう相手がなくても使えます(丁重語)。「伺う」「申し上げる」は相手が必要です。
例題:謙譲語にできるか
(生徒が先生に)私が先生の家に行きます。
できる。動作は先生の家に向かう。「伺います」。
(生徒が先生に)私は毎朝六時に起きます。
できない。向かう相手がない。「起きます」のまま。
よくある間違い
自分の動作なら何でも謙譲語にする
「お起きします」「お走りします」は誤り。向かう相手が要ります。
「伺う」を相手のない動作に使う
「私は明日、東京へ伺います」は、東京に目上がいなければ「参ります」。
謙譲語を聞き手の家族に使う
「お母様が申しました」は誤り。相手の母は相手側(おっしゃいました)。
自分で確かめよう
確認1:謙譲語の働きと記号
自分側の動作を低め、向かう相手を立てる。自分↓。
確認2:「行く」の尊敬語と謙譲語
尊敬語:いらっしゃる。謙譲語:伺う、参る。
確認3:「私は毎朝六時に起きます」を謙譲語にできますか
できない(向かう相手がない)。
まとめと次の一歩
謙譲語は自分側の動作を低めて相手を立て、動作が目上に向かうときに使います。作り方は、特別な形、お〜する、〜ていただく、の三つで、尊敬語と対で覚えます。
次のレッスンでは、動作主と向かう相手を確かめてから謙譲語の形を選ぶ手順を一行ずつ使えるようにします。
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