不自然な敬語を直そう:動作主と向きで選ぶ
このレッスンの役割
前のレッスンで、四つの観点を知りました。ここでは、一つの文を四つの観点で順に点検し、誤りを全部見つけて直す手順を一つに決めます。入試の「誤りが二か所ある」という問題は、この手順で取りこぼしなく解けます。
今回の中心技能は、「敬語を含む語に印をつける → 動作主で逆転と不足を点検する → 形で二重敬語と過剰を点検する → 直した文を通して読む」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
(生徒が先生に)先生がおっしゃられたご本を、私が拝見させていただきまして、父も読みました。
手順で点検します。印:おっしゃられた、ご本、拝見させていただき、読みました。動作主:おっしゃる=先生○、ご本=先生の物○、拝見=私○、読む=父(自分側)→ 丁寧語で足りるが、先生の本を読むので「拝読しました」が丁寧。形:おっしゃられた=二重敬語、拝見させていただき=過剰(許可の動作ではない)。直し:「先生がおっしゃったご本を、私が拝見しまして、父も拝読しました。」
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 敬語を含む語に印をつける | おっしゃられた、ご本、拝見させていただき、読みました |
| 2 | 動作主で逆転と不足を点検する | 逆転なし。「父が読む」は不足(拝読) |
| 3 | 形で二重敬語と過剰を点検する | おっしゃられた(二重)、させていただき(過剰) |
| 4 | 直した文を通して読む | 先生がおっしゃったご本を、私が拝見しまして、父も拝読しました |
段階1:印をつける語
| 種類 | 手掛かり |
|---|---|
| 特別な形 | おっしゃる、いらっしゃる、伺う、拝見する、召し上がる、いただく、くださる |
| 規則的な形 | お〜になる、お〜する、ご〜ください |
| れる・られる | 読まれる、来られる |
| させていただく | 〜させていただく |
| お・ご+名詞 | ご本、お名前、お茶 |
| 丁寧語のみの目上の動作 | 先生が言いました(印をつけて不足を疑う) |
段階2:動作主の点検表
| 語 | 動作主 | 向き | 判定 |
|---|---|---|---|
| おっしゃった | 先生 | 相手↑ | ○ |
| 拝見した | 私 | 自分↓ | ○ |
| 読みました(父) | 父(自分側) | 先生の本 | 不足 → 拝読しました |
自分側の家族の動作が先生の物に向かうときは、謙譲語にできます。
段階3:形の点検表
| 語 | 形 | 判定 |
|---|---|---|
| おっしゃられた | 特別な形+られる | 二重敬語 → おっしゃった |
| 拝見させていただき | 謙譲語+させていただく | 過剰 → 拝見し |
| ご本 | ご+漢語(相手の物) | ○ |
段階4:通して読む
直した後に通して読むと、丁寧さの不統一(文末だけ普通)や、意味の変化(受け身になった)に気づけます。
例題:誤りが三か所
(面接で)「私の父がおっしゃっていましたが、御校の先生方は生徒をとても大切にされていらっしゃられるそうで、私も御校で学ばさせていただきたいです。」
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | おっしゃって、されていらっしゃられる、学ばさせていただき |
| 2 | おっしゃる=父(自分側)→ 逆転 → 申して |
| 3 | されていらっしゃられる=二重(+重ね)→ 大切にしていらっしゃる/大切になさっている。学ばさせていただき=「さ入れ」の誤りと過剰 → 学びたい |
| 4 | 私の父が申していましたが、御校の先生方は生徒をとても大切になさっているそうで、私も御校で学びたいです |
「学ばさせて」は「学ばせて」が正しい形(さ入れ言葉)。さらに許可の場面ではないので「学びたい」で十分です。
よくある間違い
段階1で丁寧語止まりの動作に印をつけない
「先生が言いました」は敬語を含まないように見えて、不足の候補です。
段階2と3を一度にやって取りこぼす
動作主の点検(逆転・不足)と形の点検(二重・過剰)は別の目で見ます。
段階4を省く
直した結果、文末が普通の形になっていたり、受け身になっていたりします。
自分で確かめよう
確認1:「先生がおっしゃられた本を私が拝見させていただいた」を四段階で
印:おっしゃられた、拝見させていただいた → 動作主○ → 二重、過剰 → 先生がおっしゃった本を私が拝見した。
確認2:段階2で見つける観点と段階3で見つける観点
段階2:逆転・不足。段階3:二重敬語・過剰。
確認3:「学ばさせていただく」の二つの誤り
「さ入れ」(学ばせて が正しい)と、許可の場面でない「させていただく」の過剰。
まとめと次の一歩
手順は、印をつける、動作主で逆転・不足、形で二重・過剰、通して読む、の四段階です。丁寧語止まりの目上の動作にも印をつけ、二つの点検を別々に行います。
次のレッスンでは、この手順で見つかる誤りのうち、特に見落としやすい四つの型を集め、直せるようにします。
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