このレッスンは「風化・侵食・運搬・堆積」セクションの6番目、総仕上げです。ここまでに学んだ四つのはたらきを、初めて見る流域の資料に使います。
- 前のレッスンまでに受け取った力:四つの用語を場所と現象で区別し、実験やデータから根拠を選ぶ力
- このレッスンの中心:複数の資料をつなぎ、岩石が粒になって堆積するまでを復元する力
- 次のセクションへ渡す力:粒の大きさと堆積する場所の関係を、流れの強さから考える力
まず知る
地表の変化は、一枚の写真だけで決めつけられません。山の岩石がその場で崩れる「風化」、流水が地面を削る「侵食」、粒を下流へ動かす「運搬」、流れが弱まって粒がたまる「堆積」は、場所も時刻も異なるからです。
初見資料では、次の順に整理します。
- 問いを確かめる:何を説明するのか
- 場所をそろえる:山地・中流・河口・沖合のどこか
- 時間をそろえる:平常時・大雨時・大雨後のいつか
- 物質を追う:岩石・れき・砂・泥のどれか
- 四つのはたらきを当てはめる:風化・侵食・運搬・堆積
- 資料から言える事実と、事実から考えた説明を分ける
- 資料だけでは決められない点を残す
次の図は、ある流域を山地Aから沖合Dまで追った模式図です。
図はしくみを見やすくした模式図です。実際の川では、支流から別の粒が加わったり、大雨のたびに堆積物が再び動いたりします。
理解する
四つのはたらきは、一直線に一度だけ起こるとは限りません。たとえば、河原に堆積した砂が次の大雨で再び侵食され、運搬されることがあります。したがって「河口にある砂は、必ず山地Aから一回で運ばれた」とは言えません。
資料を読むときは、事実と説明を分けます。
| 資料から直接わかる事実 | 事実をつないだ説明 |
|---|---|
| 大雨時の流量は平常時より大きい | 大雨時は流れが強くなったと考えられる |
| Bでは大雨中に大きなれきも動いた | 強い流れは平常時より大きな粒を運べる |
| Cでは大雨後に砂の層が厚くなった | 流れが弱まった場所で砂が堆積したと考えられる |
| Dでは細かな泥が多い | 細かな粒は沖合まで運ばれた可能性がある |
「可能性がある」と書くのは逃げではありません。資料が示す範囲を守る、科学的に正確な表現です。同じ粒がAからDまで移動したと確かめるには、鉱物の種類、粒の丸み、移動を時系列で追った観測など、別の証拠が必要です。
また、粒の大きさだけで場所を決めることもできません。流量、川の傾き、川幅、障害物、波や海流などが変われば、堆積する位置も変わります。大切なのは「大きい粒はここ」と暗記することではなく、「その流れがその粒を運び続けられるか」と考えることです。
使う
次は、同じ流域について得られた資料です。
| 地点 | 場所 | 川底の傾き | 平常時の流量 | 大雨時の流量 | 大雨後に多く見られた粒 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 山地 | 8.0度 | 5 m³/s | 60 m³/s | 角ばったれき |
| B | 中流 | 3.0度 | 12 m³/s | 95 m³/s | 丸みのあるれきと砂 |
| C | 河口 | 0.3度 | 18 m³/s | 110 m³/s | 砂 |
| D | 沖合 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | 泥 |
この資料から、次のように復元できます。
- Aの岩石は、温度変化や水などによって風化し、細かな破片になった可能性がある。
- 大雨時には流量が増え、流水が川底や岸を侵食した。
- 流れが強い間、れき・砂・泥が下流へ運搬された。
- 河口付近で傾きが小さくなり流れが弱まると、運び続けられない砂がCに堆積した。
- より細かな泥の一部は沖合まで運ばれ、Dに堆積したと考えられる。
ただし、表だけではA・B・C・Dの粒が同じ岩石からできたとは断定できません。結論は「資料が支えるところまで」にします。
理解チェック1:直接確認
大雨後、河口Cで砂の層が厚くなりました。四つのはたらきのうち、Cで最後に目立ったのは何ですか。
答え:堆積です。流れが弱まり、運び続けられなくなった砂がたまったと考えます。
理解チェック2:誤解を直す
「Dの泥は小さいから、流れが最も強いDに堆積した」という説明の問題点は何ですか。
答え:堆積は、流れが粒を運び続けられなくなったときに起こります。泥がDまで届いたことは途中で運ばれたことを示しますが、Dの流れが最も強いことは示しません。波や海流などの資料も必要です。
理解チェック3:初見資料へ転用
別の川で、大雨後にいつもより大きなれきが下流の地点で見つかりました。どのような説明と追加資料が考えられますか。
答えの例:大雨で流量が増え、普段は動かない大きなれきも運搬された可能性があります。大雨前後の同じ地点の写真、流量の記録、れきの位置や大きさの測定を比べると確かめやすくなります。
転用する
初見の流域資料では、次の五つをメモすると説明が安定します。
- 空間:上流・中流・下流・河口・沖合のどこか
- 時間:平常時・大雨時・大雨後のいつか
- 物質:岩石・れき・砂・泥のどれを追うか
- 流れ:強くなったか、弱くなったか
- 確かさ:直接わかる事実か、根拠から考えた説明か
最後に、「なぜその場所にその粒があるのか」を一文で説明します。
流れが(強く/弱く)なったため、(粒)が(侵食・運搬・堆積)された。
この型は次の「粒の大きさと堆積する場所」で使います。次は、れき・砂・泥の大きさと沈み方を比べ、河口から沖合へ粒の分布が変わる理由を、さらに詳しく確かめます。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。