地質断面図から地層のずれと上下変位を読もう
まず知る
このレッスンの役割と到達目標
このレッスンは「地層を変形させる力」6レッスン中の4番目です。前のレッスンでは、しゅう曲・断層・隆起・沈降を、観察された形と考えられる仕組みに分けました。今回は地質断面図で、断層の両側にある同じ地層を対応させ、相対的な上下変位を読みます。ここができると、次のレッスンで「図にずれがあるから片側だけが動いた」という誤りを自分で直せます。
中心技能は、目印になる同じ地層を断層の両側で対応させ、標高差から相対的な上下変位を求めることです。断層の種類を名前だけで当てるのではなく、図のどの線を根拠にしたか、指や定規でたどりながら読みます。
地質断面図は、地面を垂直に切ったと考えた図です。最初に次の四点を確認します。
- 上下の向きと標高の目盛り。
- 断面がどの方位に切られているか。
- 地層を区別する色・模様・凡例。
- 地層を切っている断層面の位置。
断層の両側を比べるには、火山灰層のように広い範囲へ短時間で積もり、見つけやすい「かぎ層」が役立ちます。同じ模様だからと飛びつかず、上下の地層の並びや厚さも合わせて確かめます。
図では、同じ黒い火山灰層が左側で標高120 m、右側で標高80 mにあります。標高差は 120 m - 80 m = 40 m です。この40 mを、断面上で見える相対的な上下変位と読みます。
理解する
断層のずれを読む順番は「対応させる→測る→表現を限定する」です。
まず、断層の左右で同じ地層を対応させます。色や模様だけでなく、上にある層・下にある層の組み合わせも確認します。次に、同じ層の上面や下面など、同じ基準点の標高を読みます。最後に高い方から低い方を引き、差に単位を付けます。
ここで「右側が40 m下がった」と書くのは早すぎます。図から分かるのは、右側のかぎ層が左側より40 m低いことです。実際には、左側が上がった、右側が下がった、両方が異なる量だけ動いた、という複数の可能性があります。基準となる動かない場所が別に示されていなければ、片側だけの移動量は決められません。
もう一つの注意は、断面図が二次元だということです。実際の断層は奥行きをもつ面で、岩盤は上下だけでなく水平方向にも動くことがあります。斜め方向の動きを、ある方向から切った断面では上下のずれに見せることもあります。したがって、断面上の見かけの変位と、実際の三次元の移動量を同じにしません。
地層が傾いている場合も、断層がないのに二地点で標高差ができます。断層によるずれを判断するには、断層面で地層が不連続になっていることを確かめます。単に「同じ層の高さが違う」だけでは、傾斜による違いかもしれません。
読み取りのチェック表です。
| 手順 | 確かめること | よくある早とちり |
|---|---|---|
| 1 凡例を読む | 同じ地層を見分ける模様 | 色が似るだけで同じ層と決める |
| 2 連続を追う | 断層面で切れているか | 地層の傾きを断層のずれとする |
| 3 標高を読む | 同じ上面・下面を比べる | 左は上面、右は下面を測る |
| 4 差を求める | 大きい値−小さい値、単位 | 目盛り一つ分を読み違える |
| 5 限定して書く | 相対的・断面上という条件 | 片側だけの実移動量と断定する |
使う
数値を使う具体例
南北方向の地質断面図で、目印となる凝灰岩層の上面が、断層の北側では標高150 m、南側では標高90 mにありました。凝灰岩層の上下には同じ砂岩層と泥岩層が並んでいるため、同じ層だと判断できます。
- 同じ基準:凝灰岩層の上面どうしを比べる。
- 高い側:北側150 m。
- 低い側:南側90 m。
- 差:
150 - 90 = 60。 - 結論:断面上では、南側の凝灰岩層が北側より相対的に60 m低い。
模範的な説明は次の通りです。
「断層の両側で、上下の地層の並びが一致する凝灰岩層を対応させた。その上面は北側150 m、南側90 mなので、相対的な上下変位は60 mである。ただし、この断面だけから南側だけが60 m下がったとは決められない。」
次に、縮尺のある図を考えます。図上でかぎ層の上下差が2.5 cm、縦の縮尺が1 cmあたり20 mなら、断面上の差は 2.5 × 20 = 50 m です。ただし、地質断面図では縦方向を横方向より拡大して描くことがあります。縦と横の縮尺が同じか、必ず凡例を見ます。
しゅう曲した地層を断層が切っている場合は、曲がった同じ層を左右でたどります。断層より前にしゅう曲したのか、後にしゅう曲したのかは、切る関係や変形のされ方から考えますが、このレッスンではまず「どの層が対応し、どれだけずれるか」に集中します。出来事の詳しい順序は最後の総合レッスンで扱います。
転用する
地図と断面図を組み合わせる
平面の地質図には、地表で各地層や断層がどこに現れるかが示されます。そこへA–Bという断面線が引かれていたら、断面図はAからBへ見た切り口です。断面線の向きが変われば、同じ断層でも図に見えるずれ方が変わることがあります。
未知の問題では、次の順に進めます。
- 地質図で断面線の向きと断層の位置を確認する。
- 断面図で同じかぎ層を両側へたどる。
- 断面上の標高差を求める。
- 別方向の断面や地表のずれがあれば、水平成分の可能性も考える。
- 資料が示さない三次元の動きは断定しない。
間違いを直す
「同じ層に40 mの高低差があるから、断層で40 m動いた」は条件不足です。地層の傾きだけで高低差がある場合があるため、断層面で不連続になっているか確かめます。「右側が低いから右側だけが下がった」も断定できません。左右の相対的位置しか示されないからです。「図上の斜め線が5 cmだから移動距離も縮尺換算で求まる」も注意が必要です。その線が断層面の長さなのか、ずれを表す対応線なのかを区別します。
確認チェック
確認1:中心技能を直接確かめる
同じ火山灰層の上面が左側140 m、右側95 mなら、断面上の相対的な上下変位は `140−95=45 m` です。右側が左側より相対的に45 m低いと表現します。確認2:誤解を見抜く
「右側が左側より45 m低いので、右側だけが45 m沈降した」は言いすぎです。左側の隆起や両側の運動もありうるため、固定された基準や別資料が必要です。確認3:別の資料へ移す
地層が傾いた断面で高さが違うときは、まず断層面で層が切れ、同じ層の位置が不連続か確認します。傾斜による標高差と断層変位を分けます。まとめと次へのつながり
断面図から直接読めるのは、同じ地層の対応と、断面上の相対的な位置の差です。次は「しゅう曲は岩石が溶けた跡」「断層があれば今も地震が起きている」「高い土地はすべて隆起した」という誤解を、観察事実と必要な追加証拠から修正します。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。