層の模型を押す・引く・ずらす条件を公平に比べよう
まず知る
このレッスンの役割と到達目標
このレッスンは「地層を変形させる力」6レッスン中の2番目です。前のレッスンでは、地層の傾きや曲がり、ずれを、地層の連続から見つけました。今回は、層の模型に加える力を一つずつ変え、どのような変形が起こるかを公平に比べます。ここで「条件をそろえた模型実験」ができると、次のレッスンで、力の向きとしゅう曲・断層の関係を根拠付きで説明できます。
中心技能は、変える条件・調べる結果・そろえる条件を区別して、地層の変形模型を比べることです。これは結果を暗記するレッスンではありません。「何だけを変えたか」を指で示しながら読むと理解しやすくなります。
地層そのものを教室で何百万年も待って観察することはできません。そこで、色の違う粘土、スポンジ、やわらかい発泡材などを層状に重ね、短い時間で変形を再現します。ただし、模型は実物を小さくしただけではありません。材料の硬さ、圧力、温度、時間の尺度が自然とは違うため、模型から分かることと分からないことを分けます。
公平に比べるための三つの条件を確認しましょう。
| 条件の種類 | この実験での例 | 記録する問い |
|---|---|---|
| 変える条件 | 横から押す、左右へ引く、横へずらす | 今回はどの動かし方だけを変えたか |
| 調べる結果 | 層の曲がり、割れ、目印のずれ | どこが、どの向きに、どれだけ変わったか |
| そろえる条件 | 材料、層数、厚さ、動かす距離、速さ | 前の試行と同じにできたものは何か |
安全のため、硬く割れる材料や飛び散る材料は使いません。指を板の間にはさまないようにし、強い力を急に加えず、学校では先生の指示に従います。
図は代表的な観察例です。「押せば必ず同じ形になる」という答えの表ではありません。材料や押し方が違えば、曲がらずに割れることもあります。
理解する
公平な比較の要点は、一度に変える条件を一つにすることです。たとえば、試行Aだけを強く速く押し、試行Bをゆっくり引いたなら、変形の違いが「力の向き」によるのか「速さや大きさ」によるのか分かりません。層の材料、厚さ、重ね方、動かす距離と速さをできるだけそろえ、押す・引く・ずらすという操作だけを変えます。
観察するときは、「大きく変わった」だけで終わらせません。次の順番で記録します。
- 変形前に、層の境界と縦の目印線を描く。
- どちら側から、どの向きへ動かしたか矢印で残す。
- 変形後の曲がり、割れ、ずれを同じ角度から見る。
- 目印線の左右の高さや位置を比べる。
- 同じ条件を複数回試し、毎回共通した結果と一度だけの結果を分ける。
ここで大切なのは、模型の形と自然の原因をすぐ同一視しないことです。模型は「このような力の加え方で、このような形が生じうる」という可能性を示します。自然の地層では、岩石がゆっくり変形しやすい状態か、割れやすい状態か、地下の温度や圧力はどうか、力がどれほど長く働いたかも関係します。同じ圧縮でも、条件によってしゅう曲になったり、断層になったりします。
つまり、模型から言えるのは「形を作れる仕組みの候補」です。模型だけから、実際の地層に働いた力の履歴を一つに決めたり、地震が起きた時刻を決めたりすることはできません。露頭、地質断面図、岩石の性質、周囲の地層との連続など、別の証拠も必要です。
使う
条件を分ける例
次の模型実験を考えます。三色の粘土をそれぞれ5 mmの厚さで重ね、両端に板を置きました。
- 試行A:左右の板を中央へ2 cmずつ、10秒かけて動かす。
- 試行B:左右の板を外側へ2 cmずつ、10秒かけて動かす。
- 試行C:左の板を奥へ、右の板を手前へ2 cmずつ、10秒かけて動かす。
この実験で変える条件は、板を動かす向きです。調べる結果は、層の曲がり方、割れの有無、目印線のずれです。そろえる条件は、粘土の種類と厚さ、層数、動かす距離、時間、観察位置です。
記録表は次のようにします。
| 試行 | 動かした向き | 曲がり | 割れ | 目印のずれ | 複数回の共通点 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 中央へ押す | 位置と向きを記録 | 有・無 | mmで記録 | 3回後に書く |
| B | 外へ引く | 位置と向きを記録 | 有・無 | mmで記録 | 3回後に書く |
| C | 反対向きへずらす | 位置と向きを記録 | 有・無 | mmで記録 | 3回後に書く |
結果が予想と違っても失敗とは限りません。たとえばAで層が割れたなら、「押したのに間違い」と消さず、粘土が乾いていなかったか、板を急に動かさなかったか、層の厚さがそろっていたかを確かめます。予想に合う結果を選ぶのではなく、起きたことを先に記録するのが科学的な観察です。
説明するときは、次の形にすると根拠が明確になります。
「試行Aでは、ほかの条件をそろえて両側から押した。そのとき目印層が上向きに曲がった。したがって、この模型では横から押す操作が層の曲がりを作ったと考えられる。ただし、自然の地層でも必ず同じ形になるとは限らない。」
この最後の一文が、模型の限界です。観察結果、考えられる仕組み、言い切れない範囲を分けられれば、単なる用語暗記から一歩進んだ説明になります。
転用する
未知の模型へ使う
初めて見る模型で、左側だけ層が高くなり、縦の目印線が途中で切れていたとします。「横から押した模型」とすぐ決めるのではなく、次の四点を調べます。
- 変形前の目印は本当に一直線だったか。
- 切れ目の左右で同じ層を対応させられるか。
- 上下だけでなく、手前・奥へのずれはないか。
- 材料、動かす距離、速さが比較した模型と同じか。
これらを確認して初めて、どの操作が結果を説明しやすいか比較できます。自然の地質断面図でも同じです。見えているずれを観察し、考えられる力をモデルで試し、ほかの証拠と矛盾しないか確かめます。
間違いを直す
よくある誤りも直しておきましょう。「押したら必ずしゅう曲」は誤りです。材料が割れやすければ断層のような割れとずれが生じます。「模型と同じ形だから、自然でも同じ速さで起きた」も誤りです。模型は時間と大きさを大幅に縮めています。「一回うまくいったから証明できた」も誤りです。同じ条件で繰り返し、別の証拠と合わせて考えます。
確認チェック
確認1:中心技能を直接確かめる
押す条件と引く条件を比べたいとき、変えるのは板を動かす向きです。材料、層の厚さ、動かす距離と速さ、観察位置はそろえます。確認2:誤解を見抜く
「Aは強く速く押し、Bは弱くゆっくり引いた。違いは力の向きによる」とは言えません。向き以外の条件も変わっているためです。条件を一つだけ変えてやり直します。確認3:別の資料へ移す
未知の断面で地層のずれを見つけても、力の向きを一つに断定しません。同じ層の対応、ずれの向き、断面の方向、周囲の証拠を確認し、模型が示す可能性と限界を述べます。まとめと次へのつながり
次は、模型で比べた押す・引く・ずらす力を、圧縮・引っ張り・せん断という言葉で整理し、しゅう曲、断層、隆起、沈降が生じる仕組みを説明します。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。