未知の酵素実験を条件・証拠・限界で解こう
このレッスンの役割
このレッスンは「酵素が働く条件」6レッスンの最終です。これまでの、条件を一つだけ変える実験、温度・液性の模型、グラフの読み方、誤答修正を、一つの入試型資料で統合します。
目標は、未知の酵素の正体を当てることだけではありません。どの条件を比べ、どの結果を証拠にし、資料だけでは何が言えないかまで記述します。
知る・理解する
未知の酵素液Xをデンプンへ加え、次の四条件で20分置いたとします。反応後はヨウ素液でデンプンが残ったかを調べました。
| 試験管 | Xの処理・反応条件 | 結果 |
|---|---|---|
| A | 10℃ | デンプンが多く残った |
| B | 37℃ | デンプンがほぼ残らなかった |
| C | 80℃ | デンプンが多く残った |
| D | 80℃で10分処理後、37℃で反応 | デンプンが多く残った |
BとAを比べると、37℃の方が10℃より20分間の反応が進みました。BとCを比べると、80℃では働きにくいことが分かります。Dは一度80℃にしたXを37℃へ戻しても働かなかったので、高温処理で働きが失われた可能性を強くします。
ただし、液性を変えていない実験から、Xの働きやすい液性は分かりません。また、10℃で全く働けないとも言えません。時間を長くすれば反応する可能性があります。
具体例で使う
設問:「Xはだ液中のアミラーゼであると断定できるか。」
デンプンを分解し、37℃付近でよく働いたことは、だ液中のアミラーゼと一致します。しかし、すい液中にもデンプンへ働く酵素があります。液性による違いや、Xがどの器官から得られたかが示されていないので、デンプンへ働く酵素とは言えても、だ液由来とまでは断定できません。
追加実験では、同じ温度で液性だけを変える、またはタンパク質や脂肪にも働くかを調べます。複数の条件を一度に変えると原因が分からないため、一系列では一条件だけを変えます。
記述例:「80℃処理後に37℃へ戻したDでもデンプンが残ったため、Xは高温処理によって働きを失い、温度を戻しても回復しなかったと考えられる。」
誤答を直して次の学びへつなげる
「37℃で最も反応したから、Xは人のだ液である」は飛躍です。温度条件は酵素の正体を絞る一つの証拠ですが、働く栄養分や採取器官が必要です。
「Dで反応しないので、高温の影響は必ず元に戻らない」という表現も、Xについてのこの実験範囲で述べます。全ての酵素、全ての加熱時間へ広げません。
このセクションで完成したのは、結果を条件・証拠・限界で読む力です。次の「小腸での吸収と柔毛」では、消化で小さくなった物質が、どのようなつくりによって効率よく体内へ取り込まれるかを学びます。
自分で確かめよう
確認1:BとAの比較から直接言えることは?
他の条件が同じなら、Xは10℃より37℃で20分間のデンプン分解をよく進めた、と言えます。確認2:Dを置く目的は?
一度高温処理したXが、37℃へ戻した後に働きを回復するかを確かめ、高温で一時的に遅いだけか、働きを失ったかを区別するためです。確認3:Xをだ液由来と断定するために追加したい証拠は?
採取した器官、液性による働きの違い、タンパク質や脂肪にも働くかなどを、条件をそろえた追加実験で確かめます。クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。