未知の実験と高度資料から大気圧を説明しよう
まず知る
このレッスンの役割と目標
このレッスンは「気圧と大気の重さ」6レッスンの最後です。これまでに、空気の質量、大気圧の向き、大気の柱、高度別データ、誤答の修正を学びました。今回は、初めて見る容器の変化と気圧データを組み合わせ、どの知識を使うか自分で選んで説明します。
完成させる説明は、次の四つを含みます。
- 資料から直接読める観察事実。
- 容器の内側と外側に働く圧力。
- 圧力差ができた原因。
- 結論の範囲と、資料だけでは決められないこと。
入試問題では、知っている実験と同じ名前が書かれているとは限りません。「面の両側」「矢印」「高度」「hPa」を自分で見つければ、見慣れない装置にも対応できます。
理解する
未知の袋実験を分解する
生徒が海岸近くの地点Aで、少し空気を入れた柔らかい密閉袋を用意しました。そのままロープウェーで地点B、Cへ運び、袋の大きさと外気圧を記録しました。袋は途中で開けていません。
| 地点 | 高度 | 外気圧 | 袋の見た目 |
|---|---|---|---|
| A | 20 m | 1010 hPa | 少しふくらむ |
| B | 820 m | 918 hPa | Aよりふくらむ |
| C | 1620 m | 834 hPa | 最もふくらむ |
まず読める事実は、「高度が20 mから1620 mへ上がる間に、外気圧は1010 hPaから834 hPaへ低下し、袋は大きくなった」です。
次に仕組みを考えます。袋を閉じたまま高所へ運ぶと、外側の気圧は低下します。袋は柔らかいため、内側から外向きに押す作用が外側から内向きに押す作用より一時的に大きくなり、袋が広がります。広がるにつれて内部の空気の状態も変わり、やがて袋の弾性を含めてつり合います。
「山の空気が袋の中へ入り、空気が増えた」は資料と矛盾します。袋は密閉され、開けていないからです。物質の出入りではなく、内外の圧力差で体積が変化したと判断します。
使う
データとモデルを結び、間違いを直す
AとCの外気圧差は次の通りです。
1010 - 834 = 176 hPa
CはAより外気圧が176 hPa低い地点です。高度が上がると地点より上にある空気の量が減るという大気の柱モデルが、この傾向を説明します。そして、容器の内外の圧力を分けるモデルが、袋の体積変化を説明します。一つの現象に二つのモデルを順番に使っています。
答案は次のようにつなげます。
「表では、高度が高い地点ほど外気圧が低く、密閉袋は大きくなった。高所ほど上にある空気が少なく、外気圧が低くなるため、袋の内側から外向きに押す作用が相対的に大きくなり、袋がふくらんだと考えられる。」
この資料だけで「気圧低下のすべてが高度だけによる」と断定はできません。地点ごとの気温、観測時刻、天気、気圧計の誤差も確認する必要があります。ただし、高度が増すにつれて気圧が一方向に低下し、袋が大きくなるという複数の証拠は、基本モデルと一致します。
入試での誤答を見抜く
| 誤答 | ずれ | 修正 |
|---|---|---|
| 高所の空気が袋へ入った | 密閉条件を無視 | 物質の出入りではなく体積変化 |
| 真空が袋を引いた | 力の向きが不明 | 内側と外側の押す作用を比べる |
| Cは低気圧の中心だ | 高度差を無視 | 海面気圧や天気図がなければ断定しない |
| 気圧差は176 | 単位がない | 176 hPaと書く |
転用する
まとめと次へのつながり
このセクションで完成した考え方は、次の一本の流れです。
空気には質量がある → 大気の柱が気圧の高度差をつくる → 空気は面をあらゆる向きから押す → 内外の圧力差で物体が動く → データと条件で説明を確かめる
ポテトチップスの袋を山へ持って行ったとき、飛行機内で包装がふくらんだとき、気圧計で高度を推定するときにも同じ考えを使えます。ただし、袋の温度変化や容器の硬さが異なる場合は、それらも条件に加えます。
次の「一日の気温変化」では、横軸が時刻のデータを読みます。ここで使った「軸・単位・測定条件を確認し、観察事実と原因を分ける」方法を、そのまま気温の時系列へ渡します。
理解チェック
確認1:地点AとCの外気圧差は何hPaですか。
1010 − 834 = 176より、176 hPaです。CはAより176 hPa低いと基準も示します。確認2:密閉袋が高所でふくらんだ理由を説明してください。
高度が上がって外気圧が低下し、袋の内側から外向きに押す作用が外側から内向きに押す作用より相対的に大きくなったため、袋が広がったと説明できます。確認3:この資料だけでCが低気圧の中心だと決められないのはなぜですか。
地点の高度が異なり、観測された現地気圧には高度の影響が含まれるからです。天気による気圧差を比べるには海面気圧や天気図などが必要です。クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。