必要だから個体が体を変えたという誤解を直そう
このレッスンの役割
このレッスンは「生活環境に適した体のつくり」6レッスンの5番目です。前のレッスンでは、複数の特徴と生息環境の関係を比較表から読みました。ここでは、その関係を「必要だったから、一匹の動物が望んで体を変えた」と説明してしまう誤りを直します。
完成の目安は、個体が生きている間に起こる変化と、世代を重ねた集団の変化を区別し、「適している」を目的や完璧さの意味で使わずに説明できることです。
知る・理解する
暑さに慣れて汗をかきやすくなる、運動で筋肉が発達する。このように、一個体が生きている間に環境へ反応して変わることを順応と呼びます。順応はその個体に起こる変化です。筋肉を鍛えた親から、生まれつき鍛えられた筋肉の子が生まれるわけではありません。
進化で考える変化の主語は、個体ではなく集団です。同じ種類の集団にも、生まれつきの特徴に少しずつ違いがあります。ある環境で生存や繁殖に有利な特徴をもつ個体が、結果としてより多く子孫を残すことがあります。それが多くの世代で積み重なると、集団に見られる特徴の割合が変わります。
「環境に適したつくり」は、「環境が必要を伝えて作らせたつくり」ではありません。また、「その環境で絶対に困らない完璧な体」という意味でもありません。生存や繁殖に役立つ一方、別の場面では不利になる特徴もあります。
例えば、乾燥を防ぐ体表は陸上生活に役立ちますが、皮膚を使った呼吸には向きません。一つの特徴に利点と制約が同時にあることが、体のつくりを考える面白さです。
具体例で使う
「昔の動物は陸へ上がる必要があったので、努力して肺をつくった」という説明を直してみます。
まず、努力や必要性を原因にしません。集団の中には呼吸のしかたなどに違いがありました。その中で、酸素の少ない水辺や一時的な陸上利用など、ある条件のもとで空気から酸素を取り込める特徴が生存や繁殖に関係した可能性があります。その結果が多くの世代で積み重なり、集団の特徴が変化した、と説明します。
ここで大切なのは、「昔の出来事を全部見た」と言わないことです。化石、現在の生物の体の比較、発生や遺伝に関する証拠を組み合わせ、最も筋の通る説明を作ります。
同じように、「砂漠に行った一匹の動物が、乾燥したからうろこ状の体表を手に入れた」ではありません。個体がその場で新しい遺伝的特徴を作ったのではなく、もともとの違いと世代を重ねた集団の変化として考えます。
誤答を直して次の学びへつなげる
「必要だったから変わった」は、結果を原因にしています。正しくは、集団内の違い、環境との関係、生存と繁殖、世代の積み重ねという順に説明します。
「適応した生物は完璧」も誤りです。環境は変わりますし、特徴には利点と制約があります。「その条件で、他の特徴に比べて生存・繁殖に関係した」と限定して考えます。
「うろこ状の体表は乾燥を防ぐためだけにある」とも決められません。体表の保護など、同じ特徴が複数の働きに関係することがあります。
次は、未知の動物の資料を読みます。動物名を当てるだけでなく、複数の特徴から環境を推定し、言えることと言い切れないことを分けて説明します。
自分で確かめよう
確認1:順応と進化の違いは?
順応は一個体が生きている間の反応です。進化では、世代を重ねる中で集団に見られる特徴の割合が変化します。確認2:「必要だから肺ができた」の何が問題?
個体の必要や努力を体の変化の原因にし、その変化がそのまま子へ伝わるように説明している点です。確認3:「環境に適している」は「完璧」という意味?
いいえ。ある条件で生存や繁殖に役立つ関係があるという意味で、別の条件では不利になったり、制約をもったりします。クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。