個体差を優劣や遺伝だけで説明する誤解を直そう
このレッスンの役割
このレッスンは「同じ種にも個体差がある」6レッスンの5番目です。前のレッスンでは、平均と分布を分けて集団のばらつきを読みました。ここでは、個体差を「優れている・劣っている」、または「全部遺伝する」と単純化する誤りを直します。
完成の目安は、観察された差について、遺伝的要因、環境要因、測定誤差を候補に残し、価値判断を混ぜずに資料の範囲で説明できることです。
知る・理解する
個体差は、集団に見られる自然なばらつきです。大きい、速い、濃いといった値は、測った条件の中での特徴であり、その個体全体の価値や優劣を表しません。ある環境で役立つ特徴が、別の環境では不利になることもあります。
観察値の差には、少なくとも三つの候補があります。
| 候補 | 例 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 遺伝的要因 | 同じ環境でも系統ごとに花色が違う | 環境をそろえ、親子や世代を調べる |
| 環境要因 | 同じ挿し木でも光で葉の厚さが違う | 遺伝的特徴をそろえ、環境を変える |
| 測定誤差 | 測る位置で草丈が違う | 方法を統一し、繰り返し測る |
運動して筋肉が発達する、日光で肌の色が変わるなど、一個体が生活中に得た変化があります。その変化がそのまま遺伝情報へ書き込まれ、子に伝わるわけではありません。遺伝する個体差と、個体が環境へ反応した変化を区別します。
具体例で使う
誤答「長く走った親の子は、生まれつき長く走れる」を直します。親の運動で発達した筋肉は、その親の体に起きた環境による変化です。子の走る能力には多くの遺伝的要因と、成長、練習、栄養などの環境要因が関係しうるため、この文だけでは遺伝を説明できません。
誤答「葉が一枚だけ非常に長いので突然変異だ」も直します。まず同じ方法で再測定し、葉の位置、傷、日当たり、標本全体の分布を調べます。突然変異は遺伝情報の変化ですが、外れた測定値のすべてが突然変異ではありません。
人の身長や学習結果のような特徴を、一つの原因や優劣へ結びつけるのも不適切です。測定条件や環境、複数の要因が関係し、値は人の価値を表しません。
誤答を直して次の学びへつなげる
「差がある=遺伝」には環境をそろえた比較を、「外れた値=突然変異」には再測定と分布を、「大きい=優秀」には環境ごとの利点と制約を戻します。
誤答を直す順番は、事実を言い直す→原因候補を分ける→必要な比較を示す→資料だけでは言えないことを止める、です。
次は未知の個体差データを読み、どの原因候補が資料に支持されるか、何を追加調査すべきかを自分で判断します。
自分で確かめよう
確認1:平均より大きい個体は優れた個体?
そのようには判断できません。測った一つの特徴の値であり、環境によって利点と制約も変わります。確認2:運動で発達した親の筋肉は、そのまま子へ遺伝する?
そのまま遺伝しません。個体が生活中に得た変化と、遺伝情報を通して伝わる差を区別します。確認3:一つだけ離れた値を見つけたら最初に何をする?
測定方法を確認して再測定し、標本全体の分布、環境、傷など別の原因を調べます。クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。