分布図から集団のばらつきを読もう
このレッスンの役割
このレッスンは「同じ種にも個体差がある」6レッスンの4番目です。前のレッスンでは、形質に遺伝的要因と環境要因が関係しうることを比較から考えました。ここでは個々の測定値を分布として見て、集団のばらつきを読みます。
完成の目安は、平均だけで結論を出さず、値の範囲、集まりやすい位置、二集団の重なり、標本数を根拠に説明できることです。
知る・理解する
同じ種の10個体の体長を測ると、全個体が平均値と同じになるわけではありません。個々の値を点や棒で並べると、どの値が多いか、どこまで広がるか、離れた値があるかが見えます。
分布図では次を順に確認します。
- 横軸の量と単位、縦軸の個体数を読む。
- 標本数が同じか確認する。
- 最小値から最大値までの範囲を見る。
- 値が集まる中心付近を見る。
- 二集団なら、分布がどれくらい重なるかを見る。
上の集団Aが8、9、10、10、11、12、集団Bが5、7、9、11、13、15なら、どちらも平均は10です。しかしAは10付近へ集中し、Bは5〜15へ広がります。平均だけなら、この違いを見落とします。
具体例で使う
同じ種の昆虫を場所PとQで20個体ずつ調べました。体長の平均はPが12.1 mm、Qが12.5 mmです。ただし、Pは10.2〜14.0 mm、Qは10.4〜14.3 mmに広がり、多くの値が重なっています。
「Qの昆虫はPより必ず大きい」とは言えません。平均はQが少し大きくても、PにもQの多くの個体より大きい個体がいます。言えるのは「調べた標本ではQの平均が0.4 mm大きく、分布は大きく重なった」です。
別の日にPを3個体、Qを30個体だけ測った場合は、標本数の違いにも注意します。3個体の平均は偶然に左右されやすく、集団全体を十分表さない可能性があります。
誤答を直して次の学びへつなげる
「平均が10だから、10の個体が普通で他は例外」は誤りです。平均値と同じ個体が一つもない集団もあります。
「平均が違えば二集団は完全に別」は、分布の重なりを見ていません。差の大きさ、範囲、標本数を確認します。
「最大値だけ大きいから集団全体が大きい」も誤りです。一個体の値ではなく、分布全体を読みます。
次は、ばらつきを優劣へ変えたり、平均から離れた値をすぐ突然変異と決めたり、生活中に得た変化がそのまま遺伝すると考えたりする誤解を直します。
自分で確かめよう
確認1:分布を見るとき、平均以外に何を確認する?
値の範囲、集まりやすい位置、二集団の重なり、標本数、離れた値などを確認します。確認2:平均が同じ二集団は、個体差も同じ?
同じとは限りません。一方が平均付近に集中し、もう一方が広く分布することがあります。確認3:Qの平均がPより大きければ、Qの全個体がPの全個体より大きい?
言えません。分布が重なれば、Pの一部がQの一部より大きいことがあります。クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。