植物細胞に目立つ三つのつくりを見渡そう
このレッスンの役割
前のセクションでは、植物細胞と動物細胞のどちらにも、細胞膜・細胞質・核という基本のつくりがあると確かめました。ここからは、その共通の設計に植物らしい特徴がどう加わるかを考えます。
このレッスンの仕事は、細胞壁・葉緑体・大きな液胞の三つを、名前だけでなく「どこに見えるか」「植物の生活にどう役立つか」という地図に整理することです。詳しい働きは次から一つずつ解き明かします。
知る・理解する
植物は動物のように場所を移動して、光や水を探すことができません。その場所で光を受け、水を保ち、体の形を支えながら生活します。三つのつくりは、その生活のしかたと結びついています。
| つくり | 像での手がかり | 植物の生活とのつながり |
|---|---|---|
| 細胞壁 | 細胞の外側の、比較的はっきりした境界 | 丈夫な枠として形を支える |
| 葉緑体 | 葉などで見える緑色の粒 | 光を受けて養分をつくる光合成を行う |
| 液胞 | 成長した細胞の内側に大きく広がる部分 | 水やさまざまな物質を含み、細胞の張りにも関わる |
「植物細胞だけに目立つ」という言い方には注意が必要です。植物のすべての細胞で三つが同じように見える、という意味ではありません。たとえば光が届かない根やタマネギのりん葉の表皮では、葉緑体が見られないことがあります。液胞も若い細胞では小さく分かれていることがあります。
模式図は特徴を見やすく強調した図です。実物の細胞がいつも同じ長方形で、液胞が青く、核が紫に見えるわけではありません。観察像では色、染色、倍率、切った向きも確かめます。
例題で使う・転用する
例題:タマネギ表皮の細胞では、厚い境界と大きく明るい部分が見えました。しかし緑色の粒は見えませんでした。「植物細胞ではない」と判断してよいでしょうか。
判断の順番は次の通りです。
- 厚い境界は細胞壁の候補である。
- 大きく明るい部分は液胞の候補である。
- タマネギの観察部位は、ふつう地中で光を受けない部分である。
- したがって、葉緑体が見えなくても植物細胞ではないとは言えない。
答え:植物細胞と考えられます。葉緑体の有無だけで決めず、観察した部位と複数の構造を根拠にします。
転用してみましょう。池の水の中に、緑色の粒をもつ一個の細胞が見えた場合、緑色だけで植物の一部と断定はできません。単細胞生物の可能性もあるため、細胞の形、動き、集まり方など別の証拠が必要です。
よくある間違いを直す
誤り1:「植物細胞には細胞壁だけがあり、細胞膜はない」
細胞壁の内側には細胞膜があります。外側の丈夫な枠と、細胞の内外を区切る膜を混ぜないようにします。
誤り2:「植物細胞なら必ず葉緑体が見える」
葉緑体は光合成を盛んに行う部位で目立ちます。根など、光が届かない部位ではふつう見られません。
誤り3:「液胞は空っぽの穴である」
「液」という字の通り、内部には細胞液があり、水やさまざまな物質を含みます。空洞ではありません。
見分ける合言葉は、「つくりだけでなく、部位と生活まで」です。
理解チェックと次の一歩
確認1:植物細胞に目立つ三つのつくりは?
細胞壁、葉緑体、大きな液胞です。細胞膜・細胞質・核は植物と動物に共通する基本構造として、その内側または周囲に整理します。確認2:「植物細胞には必ず葉緑体がある」はなぜ不正確?
根やタマネギのりん葉の表皮など、光が届かず光合成を主に行わない部位では葉緑体が見られないことがあるからです。確認3:未知の細胞を植物細胞だと判断するとき、何を根拠にする?
細胞壁・葉緑体・大きな液胞のうち複数の手がかりと、採取した部位や観察条件を組み合わせます。一つの色や形だけでは断定しません。三つのつくりの全体像ができました。次は、細胞壁が「丈夫な枠」として植物の体をどう支えるのかを、細胞膜との違いも含めて考えます。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。