LESSON 01

初期微動継続時間と距離

速さの差が時間差を広げる理由

震源距離が大きいほどP波とS波の到着差が広がる理由を、速さの差の累積で説明する。

速さの差が時間差を広げる理由

このレッスンの役割

ここは「火山・地震・岩石」コースの「初期微動継続時間と距離」セクション(10 / 15)、全6レッスン中の3番目です。

前から受け取る力:同じ地点の震源距離と初期微動継続時間を、対応を保った表に整理する力
今回完成させる力:距離が大きいほどP波とS波の到着差が広がる理由を、速さの差から説明する力
次へ渡す力:距離と時間差のグラフを、点の意味まで理解して読む力

前のレッスンまでは、表から関係を発見しました。今回は、その関係がなぜ生まれるのかをモデルで説明します。

まず予想しよう:二人の差はいつ大きい?

同じ場所を同時に出発する二人を考えます。

  • Pさん:1秒に2区間進む
  • Sさん:1秒に1区間進む

近いゴールでは、到着時刻の差は小さそうです。遠いゴールではどうなるでしょう。

走る時間が長くなるほど、1秒ごとにつく1区間の差が積み重なります。そのため、遠いゴールほど到着時刻の差が大きくなります。

P波とS波でも、同じ考え方を使えます。ただし、人が地中を走るのではなく、地震による変化が波として伝わるモデルです。

知る:説明に必要な三つの事実

関係を説明するには、次の三つをつなぎます。

  1. P波とS波は、地震が起きると震源から伝わり始める。
  2. P波はS波より速く進む。
  3. 初期微動継続時間は、P波到着からS波到着までの時間差である。

S波が震源を「あとから出発する」から時間差ができるのではありません。二つの波の速さが異なるため、進む距離が長いほど到着差が積み重なります。

速さの異なるP波とS波の到着差が距離とともに広がるモデル 同時に震源を出た速いP波と遅いS波について、近い地点では到着差が小さく、遠い地点では到着差が大きくなる。 同時に出発し、異なる速さで進む 震源 近い地点 遠い地点 P波が先に到着 S波が後に到着 P波 S波 差が大きい 進む距離が長い → 速さの差が長く積み重なる 距離が大きいほど、P波到着からS波到着までが長くなる

理解する:差は一度に生まれるのではなく積み重なる

P波とS波が進み始めた直後は、二つの波の先端はまだ近くにあります。時間がたつたびに、速いP波は遅いS波より少しずつ先へ進みます。

観測地点が近ければ、二つの波が進む時間は短く、差が積み重なる時間も短くなります。

観測地点が遠ければ、二つの波が進む時間が長く、P波が先行する差も大きくなります。その結果、P波が到着してからS波が到着するまでの時間が長くなります。

因果の鎖にすると、

震源距離が大きい
→ P波とS波が進む時間が長い
→ 速さの差が長い時間積み重なる
→ 到着時刻の差が大きくなる
→ 初期微動継続時間が長くなる

となります。

「距離が遠いから時間差が長い」で止めず、途中に「P波とS波の速さの差」を入れることが理解のポイントです。

モデルで表せること・表せないこと

二人の走者モデルは、「同時に出発し、速さが違うと、遠いゴールほど到着差が広がる」という関係を表します。

一方、実際の地震波について次のすべてを表しているわけではありません。

  • 人や物質のかたまりが震源から観測地点まで移動するわけではない。
  • 地球内部では、場所によって波の速さが同じとは限らない。
  • 地震波は地中を広がり、単純な一本道だけを進むわけではない。

モデルは仕組みの一部を見やすくする道具です。何を省略したかも理解して使います。

使う:表を因果で説明する

次のデータがあります。

震源距離 初期微動継続時間
25 km 3秒
50 km 6秒
75 km 9秒

この表を、次の三段階で説明します。

  1. 事実:震源距離が25、50、75 kmと大きくなると、時間差は3、6、9秒と長くなっている。
  2. 仕組み:P波はS波より速い。
  3. 結論:距離が大きいほど速さの差が長く積み重なり、到着差が大きくなる。

説明文の例:

「P波はS波より速く、二つは震源から伝わる。観測地点までの距離が大きいほど速さの差が長く積み重なるため、P波とS波の到着差である初期微動継続時間が長くなる。」

自分で因果の空欄を埋めよう

次の文を完成させてください。

「P波はS波より_____。震源から観測地点までの距離が大きいほど、二つの波が進む_____が長くなり、速さの差が_____。そのため、到着時刻の差は_____なる。」

説明を確認するP波はS波より速い。距離が大きいほど進む時間が長くなり、速さの差が積み重なる。そのため到着時刻の差は大きくなる、です。

転用する:条件を変えて予測する

条件1:P波とS波の速さが同じなら

同時に出発して同じ速さなら、どの距離でも同時に到着します。初期微動継続時間は0秒になります。

条件2:二つの波の速さの差が今より小さいなら

同じ距離を進んでも到着差は小さくなります。距離が大きくなるほど差が広がる関係はあっても、広がり方は小さくなります。

条件3:観測地点が震源にとても近いなら

二つの波が進む時間が短いため、到着差も小さくなります。

このように、関係を理解していれば、覚えた表にない条件でも予測できます。

誤答を原因から直そう

誤答1:S波は震源を遅れて出発する

時間差の原因を出発時刻の差にしています。中学理科のモデルでは、地震によりP波とS波が震源から伝わり、速さの違いで到着時刻が分かれます。

誤答2:P波が途中で加速するから差が広がる

必要なのは、P波の方がS波より速いという違いです。加速を持ち込まなくても、一定の速さの差が積み重なれば到着差は広がります。

誤答3:遠くても時間差はいつも同じ

速さが異なる二つの波が長い距離を進むほど、到着差は大きくなります。同じ時間差とするなら、表の観測とも合いません。

誤答4:P波が大きな揺れ、S波が小さな揺れだから

波の速さと振幅を混同しています。到着差を生む中心は速さの違いです。

初めて見る現象へ使う

雷が光ってから音が届くまで時間がある現象を考えます。光は音よりはるかに速いため、遠い雷ほど光を見てから音が聞こえるまでの差が長くなります。

地震波と全く同じ現象ではありませんが、「速さの異なる二つの情報が同じ出来事から届く」「遠いほど到着差が広がる」という考え方は共通します。

モデルの共通点と違いを区別しながら使うのが転用です。

このレッスンの理解チェック

確認1:距離と時間差の関係を生む中心原因は?P波がS波より速く、速さの差が進む時間とともに積み重なることです。
確認2:S波があとから震源を出るから時間差ができる?いいえ。二つの波の速さが異なるため、到着時刻に差ができます。
確認3:P波とS波が同じ速さなら、初期微動継続時間は?同時に出発するモデルでは同時に到着するため、0秒です。
確認4:距離が大きいほど時間差が長い理由を一文で言うと?進む時間が長いほどP波とS波の速さの差が積み重なり、到着差が大きくなるからです。
確認5:走者モデルで表せないことは?実際の地震波の広がり方、地球内部での速さの変化、物質そのものが遠くまで移動しないことなどです。

次のレッスンへ

今回は、震源距離が大きいほど初期微動継続時間が長くなる理由を、P波とS波の速さの差が積み重なるという因果で説明しました。

次は、この関係を表したグラフから、ある時間差に対応する震源距離や、ある距離に対応する時間差を読み取ります。

クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。