比例の決めつけと資料の誤読を直そう
このレッスンの役割
ここは「火山・地震・岩石」コースの「初期微動継続時間と距離」セクション(10 / 15)、全6レッスン中の5番目です。
前から受け取る力:距離と初期微動継続時間のグラフを、軸・目盛り・補助線から読む力
今回完成させる力:典型的な誤答を「軸・単位・対応・関係・精度」の基準から診断し、修正する力
次へ渡す力:未知地点の波形とグラフを組み合わせ、妥当な震源距離を推定する力
誤答を直すとき、正しい答えを写すだけでは同じ間違いを繰り返します。「最初にどの基準がずれたか」を見つけ、手順を直します。
まず診断しよう:右上がりなら比例?
ある生徒が、右上がりの曲線を見て「時間差と距離は比例する」と答えました。
右上がりから分かるのは、一方が大きくなると他方も大きくなる傾向です。比例といえるには、少なくとも次を確かめます。
- グラフが原点を通る直線か
- 一方が2倍、3倍になると、他方も2倍、3倍になるか
- 一方に対する他方の割合が一定か
右上がりという見た目だけでは、比例と決められません。
知る:五つの診断基準
誤答を見たら、次のどこがずれたか分類します。
| 基準 | 確認すること |
|---|---|
| 軸 | 横軸・縦軸が表す量を逆にしていないか |
| 単位 | 秒、km、一目盛りを正しく読んだか |
| 対応 | 同じ地点の距離と時間差を組にしたか |
| 関係 | 比例や因果を、複数の点と仕組みで確かめたか |
| 精度 | グラフの目盛り以上に細かい答えを出していないか |
この五つを順に見ると、「計算ミス」の一言で終わらず、直す場所が具体的になります。
理解する:比例・相関・因果は同じではない
三つの言葉を区別します。
- 比例:一方が2倍、3倍になると他方も2倍、3倍になり、グラフは原点を通る直線になる関係
- 相関する傾向:一方が大きいと他方も大きくなるが、完全な比例とは限らない関係
- 因果の説明:なぜ関係が生じるかを仕組みで説明すること
初期微動継続時間と震源距離の資料が原点を通る直線なら、その資料の範囲で比例として扱えます。観測点がばらついているなら、「距離が大きいほど時間差が長い傾向」と表現する方が適切な場合があります。
また、グラフが比例して見えるだけで原因説明にはなりません。P波とS波の速さの差が進む間に積み重なる、という仕組みが必要です。
使う:五つの誤答を修正する
誤答1:横軸6秒から右へ進み、縦軸を読んだ
診断:軸
横軸の値から関係線へ行くには、まず上へ進みます。交点から左へ進んで縦軸の距離を読みます。
誤答2:縦軸の0、20、40の間に小線が一つあるので、一目盛り20 km
診断:単位
0から20の間が2区間なら、一目盛りは10 kmです。数字の差を区間数で割ります。
誤答3:地図のA、B、Cと波形のC、A、Bを上から順に組にした
診断:対応
並び順ではなく地点名を照合します。同じ地点の距離と時間差を同じ行にそろえます。
誤答4:右上がりだから比例
診断:関係
原点を通る直線か、割合が一定かを確認します。曲線や原点を通らない直線なら、右上がりでも比例とは限りません。
誤答5:一目盛り10 kmのグラフから42.137 kmと答えた
診断:精度
グラフから読める細かさを超えています。「約42 km」や「約40 km」など、線の太さと目盛りに合う値で答えます。
誤答修正の書き方
修正答案は、次の三文で書くと伝わります。
- 誤り:「この答えは_____を_____と読んでいる。」
- 根拠:「資料では_____なので、_____と読む。」
- 修正:「したがって答えは_____である。」
例:
「この答えは目盛り線の本数を区間数としている。0 kmから40 kmまでは4区間なので、一目盛りは10 kmである。したがって、3区間上の点は30 kmと読む。」
転用する:資料が不十分なときの判断
次のような資料では、言えることと断定できないことを分けます。
観測点が一つしかない
一組の距離と時間差は分かりますが、距離が変わったときの関係は比較できません。
軸の単位が消えている
点の並び方は見えても、距離や時間差の数値は決められません。
原点付近が省略されている
見えている部分が直線でも、原点を通るか確認できません。「比例」と断定するには追加情報が必要です。
波形の倍率が地点ごとに違う
振幅の見た目はそのまま比べられません。ただし、横軸の時刻が正しく読めるなら、初期微動継続時間は求められる場合があります。
「分からない」と答えることは逃げではありません。資料から決められない理由を説明することが、科学的な判断です。
自分で診断しよう
生徒A:「時間差4秒の点は、縦軸の30 kmと40 kmの間だから35.000 kmです。」
グラフの縦軸は10 km刻みで、点はほぼ中央ですが線が太く描かれています。
どの基準のずれ?
精度です。35.000 kmまでの細かさはグラフから読めません。どう直す?
資料の表記に合わせて「約35 km」などと答え、補助線で読んだことを示します。生徒B:「点が右上がりに三つ並んでいるから比例です。」
どの基準のずれ?
関係の判断です。原点を通る直線か、割合が一定かを確認していません。どう直す?
数値の割合と原点を確認し、確認できなければ「距離が大きいほど時間差が長い傾向」と表現します。このレッスンの理解チェック
確認1:誤答を診断する五つの基準は?
軸、単位、対応、関係、精度です。確認2:右上がりなら必ず比例?
いいえ。原点を通る直線か、割合が一定かを確認します。確認3:一地点のデータだけで距離と時間差の関係を決められる?
決められません。距離の異なる複数地点を比較する必要があります。確認4:振幅の倍率が違っても時間差を求められる場合があるのはなぜ?
時間差は横軸上のP波・S波到着時刻から求め、縦方向の倍率とは別だからです。確認5:資料から決められないとき、どう答える?
不足している情報と、なぜ断定できないかを説明します。次のレッスンへ
今回は、典型的な誤答を軸・単位・対応・関係・精度の五つに分け、答えではなく手順から修正しました。
次は、この診断基準を使いながら、未知地点の波形から時間差を求め、既知のグラフへ当てはめて震源距離を推定します。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。