揺れが二段階で届くのはなぜ?
このレッスンで完成させること
ここは「P波・S波と初期微動」セクションの1 / 6です。
前から受け取る力:震源は地下で地震が起こった場所だと説明できる
今回完成させる力:一つの地震で揺れが二段階になる理由を、波の出発・速さ・到着の順で説明できる
次へ渡す力:P波とS波を、速さ・到着順・揺れの特徴で比べる
このレッスンでは、用語を覚えるだけでは完了になりません。「条件が変わるとどうなるか」を予想できれば、仕組みを理解できた証拠になります。
まず30秒だけ予想しよう
地震が起きたとき、小さな揺れのあとに大きな揺れが来ることがあります。地下では一度しか地震が起きていないのに、なぜ二段階になるのでしょうか。
次の三つから、今の予想を一つ選んでください。
- 小さな地震の直後に、大きな地震がもう一度起きた
- 一つの地震から出た二種類の波が、異なる速さで届いた
- 一つ目の波が止まってから、二つ目の波が震源を出発した
まだ正解を開かず、「なぜそう思ったか」も一文で考えます。最初の予想が違っていても問題ありません。予想と実際の違いが、理解の入口になります。
目に見えない波を、二人の走者で考える
同じスタート地点から、速さの違う二人が同時に出発するとします。速い走者は先にゴールし、遅い走者は後からゴールします。
地震波も同じように、震源からほぼ同時に出発しても、伝わる速さが違えば観測地点へ届く時刻がずれます。
ただし、この例えが表しているのは「出発・速さ・到着」の関係だけです。地震波が人のように走るわけではなく、P波とS波の揺れ方や大きさまで走者と同じになるわけではありません。
図の②で、P波とS波の間に距離ができています。この「進んだ距離の差」が、観測地点での「到着する時刻の差」になります。
知っておく四つの言葉
| 言葉 | 何を表すか | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| P波 | 震源から伝わる速い地震波 | 初期微動という揺れそのものの名前ではない |
| S波 | P波より遅く伝わる地震波 | 主要動そのものの名前ではない |
| 初期微動 | P波到着からS波到着までに見られる比較的小さな揺れ | P波が止まった時間ではない |
| 主要動 | S波が到着した後に始まる比較的大きな揺れ | 地震が二回目に起きた印ではない |
ここで特に大切なのは、波と揺れを分けることです。
P波・S波は、地下を伝わる波の名前です。
初期微動・主要動は、観測地点で記録される揺れの段階です。
「なぜ」を因果の鎖でつなごう
揺れが二段階になる説明は、次の四段階です。
震源からP波とS波がほぼ同時に出発する
→ P波の方が速く伝わる
→ 観測地点へP波が先に届き、初期微動が始まる
→ S波が後から届き、主要動が始まる
この四つのうち一つでも抜けると、説明が暗記に戻りやすくなります。
たとえば「P波が先だから」と答えるだけでは、なぜ先なのかが説明できていません。「P波の方が速いから先に届く」まで言います。
また、S波が届いた瞬間にP波が消えるわけではありません。P波による揺れが続いているところへS波による揺れも加わり、主要動として大きな揺れが目立つようになります。
自分で使う体験1:観測記録を説明する
ある観測地点では、10時14分22秒に小さな揺れが始まり、10時14分27秒に大きな揺れが始まりました。
次の三点を、答えを見る前に自分の言葉で説明してください。
- 22秒には何が観測地点へ届いたか
- 27秒には何が届いたか
- なぜ二つの到着時刻が異なるのか
考えた後に、説明例を確認する
22秒には速いP波が届き、初期微動が始まりました。27秒には遅いS波が届き、主要動が始まりました。二つの波は震源をほぼ同時に出発しましたが、P波の方が速く伝わるため、到着時刻に差ができました。この問題で必要なのは、時刻の引き算ではありません。「観測された時刻」と「波が届いた出来事」を対応させることです。時間差の計算は後のレッスンで扱います。
自分で使う体験2:条件を変えて予想する
仕組みを理解できているかは、条件を変えると分かります。
予想A
もしP波とS波の伝わる速さがまったく同じなら、観測地点の揺れ方はどうなるでしょうか。
予想してから開く
二つの波はほぼ同時に到着するため、P波だけが先に届いている時間がほとんどなくなります。したがって、初期微動として区別できる時間もほとんどなくなると予想できます。予想B
P波が観測地点へ着いた瞬間、S波はどこにいるでしょうか。
図の②と③を思い出してから開く
S波は震源と観測地点の間を、まだ伝わっている途中です。S波が後から出発したのではなく、同時に出発しても速さが遅いため後ろにいます。予想C
観測地点を震源のすぐ近くへ移すと、二つの波の到着時刻の差はどうなりそうでしょうか。
理由も考えてから開く
一般に、到着時刻の差は小さくなると予想できます。進む距離が短いほど、速さの違いによって生じる到着差が広がりにくいからです。この関係は、後の「初期微動継続時間と距離」で表やグラフを使って確かめます。誤った説明を修正しよう
生徒Aは、次のように説明しました。
「最初の小さな地震が終わると、震源からS波が出発して大きな地震が始まる。」
最初に正しくない部分はどこでしょうか。
誤りの原因と修正版を見る
「最初の小さな地震」と「S波が後から出発する」の二点が誤りです。地震が二回起きたのではありません。P波とS波は一つの地震で震源からほぼ同時に出発します。P波の方が速いため先に届き、S波が遅れて届くので、観測地点の揺れが二段階に見えます。誤答を直すときは、正しい用語へ置き換えるだけでなく、「同時に出発」「速さが違う」「到着時刻がずれる」という原因まで補います。
知識が役立つ場面
緊急地震速報では、先に届くP波を地震計が検知し、後から来る強い揺れを予想します。実際には震源や規模を素早く推定する複雑な処理が必要ですが、考え方の土台は同じです。
P波が先に届く
→ S波による主要動まで、わずかな時間差が生まれる
→ その時間を使って警報を出す
つまり、P波とS波の違いは、テストのための用語ではなく、強い揺れに備える仕組みに使われる知識です。
最後に、何も見ずに説明する
次の枠を使い、声に出すかノートへ一文で書いてください。
「震源から___と___がほぼ同時に出発する。___の方が速いため先に届き、___が始まる。その後___が届き、___が始まる。だから揺れは二段階になる。」
完成した説明を確認する
震源からP波とS波がほぼ同時に出発する。P波の方が速いため先に届き、初期微動が始まる。その後S波が届き、主要動が始まる。だから揺れは二段階になる。完了のチェック
次の三つができれば、このレッスンは完了です。
- P波・S波と、初期微動・主要動を区別できる
- 「同時に出発」「速さの違い」「到着時刻の差」を使って説明できる
- 波の速さを変えた場合の揺れ方を予想できる
次のレッスンでは、P波とS波を速さ・到着順・揺れの特徴で詳しく比較します。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。