LESSON 01

初期微動継続時間と距離

観測地点が遠いほど時間差が広がる?

複数地点のデータから、震源距離と初期微動継続時間の関係を根拠つきで予想する。

観測地点が遠いほど時間差が広がる?

このレッスンの役割

ここは「火山・地震・岩石」コースの「初期微動継続時間と距離」セクション(10 / 15)、全6レッスン中の1番目です。

前から受け取る力:複数地点のP波・S波到着時刻と初期微動継続時間を表に整理する力
今回完成させる力:複数地点のデータから、震源距離と初期微動継続時間の関係を予想する力
次へ渡す力:地点名を対応させ、距離と時間差の二列の表を正しく作る力

このレッスンでは、結論を先に暗記しません。実際の数値を比べ、「どの量が変わると、どの量がどう変わるか」を自分で発見します。

まず予想しよう

同じ地震を、震源からの距離が異なる三つの地点で観測しました。

  • 地点A:震源から30 km
  • 地点B:震源から60 km
  • 地点C:震源から90 km

どの地点で初期微動が最も長く続くと思いますか。理由も一文で予想してください。

予想は外れてもかまいません。大切なのは、あとで観測データと比べて考えを直すことです。

知る:比べる二つの量

このセクションで比べるのは、次の二つです。

  1. 震源距離:震源から観測地点までの距離
  2. 初期微動継続時間:P波到着からS波到着までの時間

震源距離の単位はkm、初期微動継続時間の単位は秒です。

「震央から地表に沿った距離」と「震源から観測地点までの距離」は同じとは限りません。このセクションの資料で震源距離と書かれていたら、地下の震源から観測地点までの距離を使います。

震源から距離の異なる三地点へP波とS波が届く時間差を比較する図 震源から30、60、90キロメートルの地点A、B、Cで、初期微動継続時間が4、8、12秒と長くなる観測例。 地表 震源 地点A30 km 地点B60 km 地点C90 km 4秒 8秒 12秒 震源距離が大きい地点ほど、P波とS波の到着差が大きい

理解する:データから関係を読む

三地点の観測結果を表にします。

地点 震源距離 初期微動継続時間
A 30 km 4秒
B 60 km 8秒
C 90 km 12秒

距離を小さい順に見ると、30 km、60 km、90 kmです。時間差も4秒、8秒、12秒と大きくなっています。

このデータからは、

「震源距離が大きい地点ほど、初期微動継続時間が長い」

という傾向が読み取れます。

ただし、「地点Cは波形が大きいから遠い」と判断したのではありません。振幅ではなく、P波到着からS波到着までの時間差を比べています。

また、P波の到着時刻だけで距離を比べることもできません。地震の発生時刻や時計の表示が分からなければ、「何時に届いたか」だけでは伝わった時間が決まらないからです。

使う:観測事実を一文にする

次の表を読みます。

地点 震源距離 P波到着 S波到着
X 20 km 10時05分12秒 10時05分15秒
Y 50 km 10時05分16秒 10時05分23秒
Z 80 km 10時05分20秒 10時05分31秒

最初に、初期微動継続時間を求めます。

  • X:15−12=3秒
  • Y:23−16=7秒
  • Z:31−20=11秒

距離は20 km、50 km、80 kmと大きくなり、時間差も3秒、7秒、11秒と長くなっています。

したがって、

「この三地点では、震源距離が大きいほど初期微動継続時間が長い」

と説明できます。

「必ず」「すべての地震で正確に同じ割合」とまでは、この三点だけから言えません。資料から直接確かめられる範囲で表現します。

どの情報を選ぶ?

設問が「震源距離との関係」を問うとき、必要な情報を選びます。

情報 今回使う? 理由
震源距離 使う 比べる一方の量だから
P波到着時刻 使う 時間差の始まりだから
S波到着時刻 使う 時間差の終わりだから
波形の最大の高さ 直接は使わない 初期微動継続時間ではないから
主要動の終了時刻 使わない 初期微動の終わりではないから

資料問題では、すべての数字を使う必要はありません。「何と何の関係を調べるか」から必要な列を選びます。

転用する:紛らわしい資料を見抜く

地点DのP波は9時00分10秒、S波は9時00分18秒に到着しました。地点EのP波は9時00分25秒、S波は9時00分30秒に到着しました。

P波の到着だけを見ると、Eの方が遅いです。しかし初期微動継続時間は、

  • D:18−10=8秒
  • E:30−25=5秒

です。

「到着時刻が遅い地点」と「P波とS波の時間差が長い地点」は同じではありません。震源距離との関係を調べるときに見るのは、時刻そのものではなく時間差です。

さらに、DとEの震源距離が与えられていなければ、この二地点だけで「どちらが遠い」と断定する前に、このセクションで学ぶ関係を根拠として使える条件か確認します。

誤答を原因から直そう

誤答1:P波が最も遅く届いた地点が最も遠い

P波到着時刻だけを比べています。初期微動継続時間は各地点でS波−P波を求めます。

誤答2:揺れが最も大きい地点が最も遠い

波形の高さには、地震の規模、地盤、装置の倍率なども関係します。距離との関係を調べる量はP波とS波の到着差です。

誤答3:一地点の記録だけで関係を決める

関係を調べるには、距離の異なる複数地点を比べる必要があります。一組の値だけでは、距離が変わったときの変化を見られません。

誤答4:30 kmで4秒だから、どんな地震でも必ず同じ

一つの資料で見つけた数値関係を、条件の違うすべての地震へ無条件に広げてはいけません。まず与えられた表やグラフの範囲で判断します。

自分で説明してみよう

次の形を完成させてください。

「地点A、B、Cでは、震源距離が_____、と大きくなると、初期微動継続時間も、_____と長くなった。したがって、この資料からは_____という傾向が読み取れる。」

数値を二組とも示すと、「なんとなくそう見える」ではなく、根拠のある説明になります。

このレッスンの理解チェック

確認1:距離との関係を調べるとき、波形から求める量は?P波到着からS波到着までの初期微動継続時間です。
確認2:30 kmで4秒、60 kmで8秒、90 kmで12秒なら、どんな傾向?震源距離が大きい地点ほど、初期微動継続時間が長い傾向です。
確認3:P波到着時刻が遅いだけで、時間差も長いと言える?言えません。各地点でS波到着時刻−P波到着時刻を計算します。
確認4:波形の高さだけで震源距離を決められる?決められません。振幅には地盤や地震の規模、装置など複数の条件が関係します。
確認5:一地点のデータだけで二つの量の関係を判断しにくいのはなぜ?距離が変わったときに時間差がどう変化するかを比較できないからです。

次のレッスンへ

今回は、複数地点の観測値を比べ、震源距離が大きい地点ほど初期微動継続時間が長いという関係を、数値を根拠に予想しました。

次は、波形・地図・地点一覧から対応する値を取り出し、「震源距離」と「初期微動継続時間」の二列の表を正しく作ります。

クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。