LESSON 01

P波・S波と初期微動

地震計の波形から初期微動と主要動を見分けよう

地震計記録を静止・初期微動・主要動に区切り、雑音や最大振幅に惑わされず到着点を特定する。

地震計の波形から初期微動と主要動を見分けよう

このレッスンで完成させること

ここは「P波・S波と初期微動」セクションの3 / 6です。

前から受け取る力:P波は先に届き初期微動を、S波は後から届き主要動を始めると比較できる
今回完成させる力:地震計記録を三つの区間に分け、P波とS波の到着点を根拠付きで指せる
次へ渡す力:到着点の真下にある時刻を、目盛りから正確に読む

今回は時刻の計算を急ぎません。まず波形の「どこが境目か」を見抜くことに集中します。

最初に波形を三つへ区切ってみよう

地震計の線は複雑に見えますが、最初に探すものは三つだけです。

  1. 地震波が届く前の、ほぼ静かな記録
  2. 小さな揺れが持続して始まる点
  3. 大きな揺れへ変化する点

次の図を、まずラベルを読む前に左から右へ目で追ってください。「線の高さ」ではなく「揺れ方が変わった最初の場所」を探します。

雑音を含む地震計記録を三つの区間に分ける図静かな部分に一度だけの小さな雑音があり、その後P波到着で小さな揺れが持続し、S波到着で主要動が始まる波形時刻振れP波到着S波到着到着前初期微動主要動一度だけの雑音

知っておく波形の読み方

区間 見た目 何が起きたか
到着前 基準線の近くでほぼ静か まだ地震波が届いていない
初期微動 小さな振れが続き始める P波が到着した
主要動 振れ方が大きく変わる S波が到着した

横軸は時刻の進み、縦方向の振れは地震計が記録した揺れを表します。線が右へ進むほど時間が後です。

このレッスンでは、正確な秒数より「変化の始まり」を読みます。次のレッスンで一目盛りを使って時刻へ変えます。

なぜ最大の山ではなく「始まり」を読むのか

波が観測地点へ到着した瞬間は、記録が変化し始めた点です。到着後に揺れがさらに大きくなり、最大の山が後から現れることがあります。

たとえば、S波が11秒に到着し、波形が最も大きくなったのが14秒でも、S波到着は11秒です。

到着とは「最も大きく揺れたとき」ではなく、「その波による変化が始まったとき」だからです。

これは電車に似ています。電車がホームへ入った時刻と、ホームの中央へ来た時刻は同じではありません。最初にホームへ入った瞬間が到着です。

雑音とP波到着をどう区別する?

実際の地震計には、風、交通、機械の動きなどによる雑音が入ることがあります。図の丸で囲んだ振れは一度だけ飛び出し、すぐ静かな状態へ戻っています。

P波到着を探すときは、次の二点を確認します。

  • それまでの静かな状態から変わったか
  • その後も小さな揺れが続いているか

一度だけの細い振れを見つけてすぐP波と決めず、右側の記録まで追います。

読み取り手順を実際に使う

手順1:軸を確認する

横軸が時刻、縦軸が振れです。グラフが左から右へ進むことを確かめます。

手順2:静かな部分を探す

最初の基準線付近を見ます。これが地震波到着前の比較材料です。

手順3:小さな揺れが続く最初の点を探す

ここがP波到着です。一本の雑音ではなく、変化が続くことを確かめます。

手順4:大きな揺れへ変わる最初の点を探す

ここがS波到着です。最大値ではなく、主要動の始まりです。

手順5:三つの区間を指でなぞる

到着前、初期微動、主要動の順に、図の下を指でなぞります。境目を二本引ければ読み取りは完成です。

自分で使う体験1:文章の記録を区切る

記録Aは次のようになっていました。

  • 10時18分04秒まで、ほぼ静か
  • 04秒から、小さな振れが続く
  • 11秒から、大きな振れへ変わる
  • 14秒で、振れが最大になる

次の四つを答えてください。

  1. P波到着はどこか
  2. S波到着はどこか
  3. 初期微動はどこからどこまでか
  4. 14秒をS波到着としない理由は何か
自分で区切ってから説明を見るP波到着は04秒、S波到着は11秒です。初期微動は04秒から11秒までです。14秒は振れが最大になった時刻であり、主要動が始まった時刻ではないため、S波到着にはしません。

自分で使う体験2:雑音を見分ける

ある記録では、2秒に一度だけ細い振れがあり、すぐ静かになりました。6秒からは小さな振れが続き、12秒から大きな振れになりました。

P波到着は2秒と6秒のどちらでしょうか。

根拠を考えてから開く6秒です。2秒の振れは一度だけで静かな状態へ戻っています。6秒からは変化が持続しているので、P波到着と判断できます。S波到着は大きな揺れが始まる12秒です。

「最初に線が動いた場所」だけでは不十分です。「その後も地震による変化が続くか」を根拠に加えます。

誤答を修正する

生徒Cは、図の最も高い山へP、最も深い谷へSと書きました。

この考え方の問題は何でしょうか。

誤りの原因と直し方を見る生徒Cは、波の到着を振れの大きさだけで決めています。P波・S波の到着は、山と谷の高さではなく、揺れ方が変わり始めた境目から読みます。静かな部分から最初に持続して振れ始める点をP波到着、大きな主要動へ変わる点をS波到着として引き直します。

もしこの誤りをしたら、前の「P波とS波の違いを比べよう」へ戻り、速さ・到着順と振幅を分けて確認します。

初見の波形へ転用する

波形Bは、P波による初期微動が大きく記録され、S波到着後も最大振幅があまり増えませんでした。それでもP波とS波を判定できるでしょうか。

考えてから開く判定には到着順と「揺れ方が変化した始まり」を使います。ただし、主要動への変化が資料から読み取れないほど不明確なら、振幅だけで無理に判定せず、問題文、別方向の記録、複数地点の記録など追加の証拠を確認します。科学では、根拠が足りないときに断定しないことも大切です。

資料問題では必ず境目が読み取れるとは限りません。「分からない資料を、知っている型へ無理に当てはめない」という判断も、知識を使う力です。

最後に、波形へ二本の線を引くつもりで説明する

何も見ずに次の順番を声に出してください。

「静かな部分を探す。次に___が続き始める点へP波到着の線を引く。その後、___へ変わり始める点へS波到着の線を引く。」

言い終えてから確認する静かな部分を探す。次に小さな揺れが続き始める点へP波到着の線を引く。その後、大きな主要動へ変わり始める点へS波到着の線を引く。

完了のチェック

次の三つができれば完了です。

  • 波形を到着前・初期微動・主要動へ区切れる
  • 一度だけの雑音と、持続するP波到着を区別できる
  • 最大振幅ではなく、変化の始まりを到着点として選べる

次のレッスンでは、今引いた二本の線から時刻軸へ下り、一目盛りを使って到着時刻を読みます。

クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。