地震計の波形から初期微動と主要動を見分けよう
このレッスンで完成させること
ここは「P波・S波と初期微動」セクションの3 / 6です。
前から受け取る力:P波は先に届き初期微動を、S波は後から届き主要動を始めると比較できる
今回完成させる力:地震計記録を三つの区間に分け、P波とS波の到着点を根拠付きで指せる
次へ渡す力:到着点の真下にある時刻を、目盛りから正確に読む
今回は時刻の計算を急ぎません。まず波形の「どこが境目か」を見抜くことに集中します。
最初に波形を三つへ区切ってみよう
地震計の線は複雑に見えますが、最初に探すものは三つだけです。
- 地震波が届く前の、ほぼ静かな記録
- 小さな揺れが持続して始まる点
- 大きな揺れへ変化する点
次の図を、まずラベルを読む前に左から右へ目で追ってください。「線の高さ」ではなく「揺れ方が変わった最初の場所」を探します。
知っておく波形の読み方
| 区間 | 見た目 | 何が起きたか |
|---|---|---|
| 到着前 | 基準線の近くでほぼ静か | まだ地震波が届いていない |
| 初期微動 | 小さな振れが続き始める | P波が到着した |
| 主要動 | 振れ方が大きく変わる | S波が到着した |
横軸は時刻の進み、縦方向の振れは地震計が記録した揺れを表します。線が右へ進むほど時間が後です。
このレッスンでは、正確な秒数より「変化の始まり」を読みます。次のレッスンで一目盛りを使って時刻へ変えます。
なぜ最大の山ではなく「始まり」を読むのか
波が観測地点へ到着した瞬間は、記録が変化し始めた点です。到着後に揺れがさらに大きくなり、最大の山が後から現れることがあります。
たとえば、S波が11秒に到着し、波形が最も大きくなったのが14秒でも、S波到着は11秒です。
到着とは「最も大きく揺れたとき」ではなく、「その波による変化が始まったとき」だからです。
これは電車に似ています。電車がホームへ入った時刻と、ホームの中央へ来た時刻は同じではありません。最初にホームへ入った瞬間が到着です。
雑音とP波到着をどう区別する?
実際の地震計には、風、交通、機械の動きなどによる雑音が入ることがあります。図の丸で囲んだ振れは一度だけ飛び出し、すぐ静かな状態へ戻っています。
P波到着を探すときは、次の二点を確認します。
- それまでの静かな状態から変わったか
- その後も小さな揺れが続いているか
一度だけの細い振れを見つけてすぐP波と決めず、右側の記録まで追います。
読み取り手順を実際に使う
手順1:軸を確認する
横軸が時刻、縦軸が振れです。グラフが左から右へ進むことを確かめます。
手順2:静かな部分を探す
最初の基準線付近を見ます。これが地震波到着前の比較材料です。
手順3:小さな揺れが続く最初の点を探す
ここがP波到着です。一本の雑音ではなく、変化が続くことを確かめます。
手順4:大きな揺れへ変わる最初の点を探す
ここがS波到着です。最大値ではなく、主要動の始まりです。
手順5:三つの区間を指でなぞる
到着前、初期微動、主要動の順に、図の下を指でなぞります。境目を二本引ければ読み取りは完成です。
自分で使う体験1:文章の記録を区切る
記録Aは次のようになっていました。
- 10時18分04秒まで、ほぼ静か
- 04秒から、小さな振れが続く
- 11秒から、大きな振れへ変わる
- 14秒で、振れが最大になる
次の四つを答えてください。
- P波到着はどこか
- S波到着はどこか
- 初期微動はどこからどこまでか
- 14秒をS波到着としない理由は何か
自分で区切ってから説明を見る
P波到着は04秒、S波到着は11秒です。初期微動は04秒から11秒までです。14秒は振れが最大になった時刻であり、主要動が始まった時刻ではないため、S波到着にはしません。自分で使う体験2:雑音を見分ける
ある記録では、2秒に一度だけ細い振れがあり、すぐ静かになりました。6秒からは小さな振れが続き、12秒から大きな振れになりました。
P波到着は2秒と6秒のどちらでしょうか。
根拠を考えてから開く
6秒です。2秒の振れは一度だけで静かな状態へ戻っています。6秒からは変化が持続しているので、P波到着と判断できます。S波到着は大きな揺れが始まる12秒です。「最初に線が動いた場所」だけでは不十分です。「その後も地震による変化が続くか」を根拠に加えます。
誤答を修正する
生徒Cは、図の最も高い山へP、最も深い谷へSと書きました。
この考え方の問題は何でしょうか。
誤りの原因と直し方を見る
生徒Cは、波の到着を振れの大きさだけで決めています。P波・S波の到着は、山と谷の高さではなく、揺れ方が変わり始めた境目から読みます。静かな部分から最初に持続して振れ始める点をP波到着、大きな主要動へ変わる点をS波到着として引き直します。もしこの誤りをしたら、前の「P波とS波の違いを比べよう」へ戻り、速さ・到着順と振幅を分けて確認します。
初見の波形へ転用する
波形Bは、P波による初期微動が大きく記録され、S波到着後も最大振幅があまり増えませんでした。それでもP波とS波を判定できるでしょうか。
考えてから開く
判定には到着順と「揺れ方が変化した始まり」を使います。ただし、主要動への変化が資料から読み取れないほど不明確なら、振幅だけで無理に判定せず、問題文、別方向の記録、複数地点の記録など追加の証拠を確認します。科学では、根拠が足りないときに断定しないことも大切です。資料問題では必ず境目が読み取れるとは限りません。「分からない資料を、知っている型へ無理に当てはめない」という判断も、知識を使う力です。
最後に、波形へ二本の線を引くつもりで説明する
何も見ずに次の順番を声に出してください。
「静かな部分を探す。次に___が続き始める点へP波到着の線を引く。その後、___へ変わり始める点へS波到着の線を引く。」
言い終えてから確認する
静かな部分を探す。次に小さな揺れが続き始める点へP波到着の線を引く。その後、大きな主要動へ変わり始める点へS波到着の線を引く。完了のチェック
次の三つができれば完了です。
- 波形を到着前・初期微動・主要動へ区切れる
- 一度だけの雑音と、持続するP波到着を区別できる
- 最大振幅ではなく、変化の始まりを到着点として選べる
次のレッスンでは、今引いた二本の線から時刻軸へ下り、一目盛りを使って到着時刻を読みます。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。