LESSON 01

火山・地震・岩石の入試総合

地震波グラフと地点情報を統合しよう

複数地点の地震波形・到着時刻・震源距離を対応させ、P波とS波の速さ、時間差、震度とマグニチュードを正しく読み分けます。

地震波グラフと地点情報を統合しよう

このレッスンの役割

ここは「火山・地震・岩石の入試総合」セクションの3 / 6です。

前のレッスンでは、岩石の組織・鉱物・色を別々の証拠として読み、冷え方と岩石の種類を推定しました。今回は、複数地点の地震波形、到着時刻、距離を一つの説明にまとめます。

このレッスンで完成させる力:地震波グラフと地点情報を対応させ、距離・速さ・揺れの尺度を混同せず説明する
次へ渡す力:地図と断面図を統合し、プレート・地震・火山・岩石の因果を説明する

まず知る:五つの量を分ける

地震の総合問題では、似た言葉を同じものとして扱わないことが出発点です。

意味 単位・表し方
発生時刻 震源で地震が始まった時刻 時・分・秒
到着時刻 波が観測地点に着いた時計の時刻 時・分・秒
伝わった時間 発生から到着までにかかった時間
初期微動継続時間 P波到着からS波到着までの差
震源距離 震源から観測地点までの距離 km

さらに、震度は地点ごとの揺れの強さ、マグニチュードは地震そのものの規模です。到着時刻の差や震源距離から、マグニチュードが自動的に決まるわけではありません。

理解する:なぜ遠いほど時間差が広がるのか

P波もS波も同じ震源からほぼ同時に出発します。P波の方が速いため、先に到着します。S波は遅れて到着します。

近い地点では、二つの波が進む時間そのものが短く、到着の差も小さくなります。遠い地点では、速さの違いが長い時間積み重なるため、差が大きくなります。

二つの観測地点におけるP波とS波の到着 地震発生から観測地点AとBまでのP波とS波の伝わり方と、地点Bの方が初期微動継続時間が長いことを示す図 時刻 0秒10秒20秒30秒40秒 地点A P:10秒 S:18秒 差 8秒 地点B P:20秒 S:36秒 差 16秒

図では、発生時刻を0秒として、地点AにはP波が10秒後、S波が18秒後に届きます。地点BにはP波が20秒後、S波が36秒後に届きます。

地点Aの時間差:18 − 10 = 8秒
地点Bの時間差:36 − 20 = 16秒

遠い地点Bでは、P波とS波の速さの差が長く積み重なり、時間差が2倍になっています。

使う:二地点の資料を一つずつ処理する

地震の発生時刻を10時00分00秒とします。

地点 震源距離 P波到着 S波到着
A 80 km 10時00分10秒 10時00分18秒
B 160 km 10時00分20秒 10時00分36秒

手順1 時計の時刻を伝わった時間へ変える

発生時刻が10時00分00秒なので、地点AのP波は10秒、S波は18秒かかりました。地点BはP波20秒、S波36秒です。

到着時刻どうしをそのまま距離で割ることはできません。速さの計算に使うのは、発生してから伝わった時間です。

手順2 初期微動継続時間を求める

地点A:18 − 10 = 8秒
地点B:36 − 20 = 16秒

この値は「S波の到着時刻 − P波の到着時刻」です。「地震が続いた全時間」ではありません。

手順3 波の速さを確かめる

P波
地点A:80 ÷ 10 = 8 km/s
地点B:160 ÷ 20 = 8 km/s

S波
地点A:80 ÷ 18 ≒ 4.4 km/s
地点B:160 ÷ 36 ≒ 4.4 km/s

二地点でほぼ同じ速さになるため、表のデータに一貫性があります。計算結果が大きくずれたときは、到着時刻と伝わった時間を取り違えていないか確認します。

手順4 資料全体を説明する

「地点Bは地点Aより震源距離が2倍である。P波とS波の伝わった時間もそれぞれ2倍で、初期微動継続時間は8秒から16秒へ広がった。これはP波がS波より速く、距離が長いほど到着時刻の差が大きくなるためである。」

計算だけで終わらず、「なぜ」を一文でつなぐと理解を示せます。

震度とマグニチュードを混ぜない

同じ地震でも、地点AとBの震度が異なることがあります。震源からの距離、震源の深さ、地盤などが地点ごとの揺れに影響するためです。

一方、一つの地震について発表されるマグニチュードは、観測地点ごとに別の値になるものではありません。

したがって、次の説明は誤りです。

「地点Bは初期微動継続時間が長いので、地点Bのマグニチュードが大きい。」

正しくは、「地点Bは震源から遠いと推定できる」です。時間差が直接示すのは距離との関係であり、地震の規模ではありません。

よくある誤りを直す

誤り 原因 確認すること
P波よりS波が先に到着した 波形の小さな揺れを見落とした 最初の揺れ始めがP波
10時00分20秒を20秒として無条件に計算 発生時刻を確認していない 到着−発生で伝わった時間を出す
時間差を足し算で求めた 区間の意味が曖昧 S到着−P到着
遠い地点ほど震度が必ず小さい 地盤や深さを無視 震度には複数の条件が影響
地点ごとにマグニチュードが違う 尺度の対象を混同 震度は地点、Mは地震そのもの

転用する:発生時刻が書かれていない資料

未知の地点Cで、P波が10時02分12秒、S波が10時02分24秒に到着しました。発生時刻は示されていません。上の地点Aの「時間差8秒で80 km」という関係がこの地震にも使えるとします。

  1. 発生時刻がなくても、到着時刻どうしの差は求められる。
  2. 24秒 − 12秒 = 12秒。
  3. 8秒で80 kmなら、1秒あたり10 km。
  4. 12秒では約120 kmと推定できる。

この問題では、P波やS波の速さを直接求めるための発生時刻は足りません。しかし、時間差と距離の関係なら使えます。「資料から分かること」と「まだ分からないこと」を区別するのも、総合問題の力です。

このレッスンの範囲

ここでは、地震波形・時刻・距離を統合しました。プレートの動きや火山のでき方は、次のレッスンで断面図を使って結びます。

自分で確かめよう

確認1:直接確認P波が10時15分08秒、S波が10時15分21秒に到着しました。初期微動継続時間は何秒ですか。答え:21 − 8 = 13秒です。
確認2:誤りの修正「初期微動継続時間が長い地点ほど、その地点のマグニチュードが大きい」のどこが誤りですか。答え:時間差は主に震源距離と関係します。マグニチュードは地点ではなく地震そのものの規模です。
確認3:初見への転用時間差6秒の地点が震源距離60 kmなら、同じ関係で時間差15秒の地点は何kmと推定できますか。答え:1秒あたり10 kmなので、約150 kmです。

まとめと次の一歩

複数地点の地震資料は、「時計の時刻→伝わった時間→PとSの差→距離や速さ」の順で読みます。震度・マグニチュードは、何を表す尺度かを確認して別に扱います。

次は、地図と断面図からプレートの沈み込み、地震、火山、岩石のでき方を一つの地球システムとして説明します。

クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。