LESSON 01

P波・S波と初期微動

複数地点の地震記録を読み比べよう

複数地点の地震記録を同じ項目の表に整理し、縮尺を確認して根拠つきで比較する。

複数地点の地震記録を読み比べよう

このレッスンの役割

ここは「火山・地震・岩石」コースの「P波・S波と初期微動」セクション(9 / 15)、全6レッスン中の6番目です。

前から受け取る力:一地点の波形からP波・S波の到着時刻を読み、その差を求める力
今回完成させる力:複数地点の記録を同じ項目の表に整理し、根拠を示して比較する力
次へ渡す力:初期微動継続時間と震源からの距離の関係を、表やグラフから考える準備

このセクションの仕上げです。P波とS波の意味、到着点の見分け、時刻軸、時間差という前の五つの力を、一つの資料問題で組み合わせます。

まず考えよう:見た目の幅だけで比べてよい?

二つの地震計記録で、P波からS波までの横幅が同じ3cmに見えたとします。

  • 地点A:一目盛り1秒
  • 地点B:一目盛り2秒

横幅が同じでも、表す時間が同じとは限りません。図の長さを比べる前に、各記録の横軸が何秒を表すか確認する必要があります。

複数資料では、「全部を一度に見る」より、「一地点ずつ同じ手順で数値にする」方が正確です。

知る:比較の前に四列の表を作る

各地点について必要なのは、次の四項目です。

地点 P波到着時刻 S波到着時刻 初期微動継続時間
観測地点の名前 小さな揺れの始まり 大きな揺れの始まり S波時刻−P波時刻

表にすると、「どの地点の、どの値を比べているか」が見えるようになります。

P波の時刻だけ、S波の時刻だけ、波形の高さだけを見ても、初期微動継続時間は決まりません。各地点で二つの到着時刻を読み、その差を求めます。

三地点の地震記録を一地点ずつ読み表へ整理する図 地点A、B、Cについて、異なる目盛りの時刻軸からP波とS波の到着時刻を読み、時間差6秒、9秒、12秒を表へ移す。 波形 → 到着時刻 → 時間差 → 表 地点A地点B地点C P 12秒S 18秒 P 15秒S 24秒 P 19秒S 31秒 一目盛り2秒一目盛り3秒一目盛り4秒 整理した表 地点時間差 A6秒 B9秒 C12秒 一地点ずつ計算してから、最後に列を縦に比べる 縮尺が違っても、時刻に直せば同じ基準で比べられる

理解する:なぜ表にすると判断しやすいのか

波形には、揺れの大きさ、揺れ始め、横軸の目盛りなど、多くの情報があります。頭の中だけで比べると、次のような情報が混ざります。

  • P波が到着した時刻
  • S波が到着した時刻
  • P波とS波の間の時間
  • 波形の高さ
  • グラフの縮尺

表は、必要な値だけを同じ列にそろえる道具です。「初期微動継続時間が最も長い地点」を探すなら、最後の列だけを縦に比べられます。

ただし、表は計算を正しくしたときにだけ役立ちます。元の波形から読み取った値と表を往復して、転記ミスがないか確かめます。

使う:三地点を同じ手順で整理する

同じ地震について、次の到着時刻を読み取りました。

地点 P波到着 S波到着 初期微動継続時間
A 10時00分12秒 10時00分18秒 18−12=6秒
B 10時00分15秒 10時00分24秒 24−15=9秒
C 10時00分19秒 10時00分31秒 31−19=12秒

この表から確実に言えることは、次の通りです。

  • 三地点の初期微動継続時間は同じではない。
  • 最も短いのは地点Aの6秒。
  • 最も長いのは地点Cの12秒。
  • 地点Cは地点Aより6秒長い。

この時点では、観測した事実と計算結果を整理しています。「なぜ地点によって差が生まれるのか」「震源から遠いのはどこか」という関係は、次のセクションでグラフとともに根拠を学びます。

比較の手順

  1. 地点ごとに横軸の単位と一目盛りを確認する。
  2. P波到着点を読み、P波列に書く。
  3. S波到着点を読み、S波列に書く。
  4. S波時刻−P波時刻を計算する。
  5. すべての地点でP波時刻<S波時刻か確認する。
  6. 問われた列だけを縦に比べる。

一部を自分で完成させよう

次の表の空欄を埋めてください。

地点 P波到着 S波到着 初期微動継続時間
X 11時08分04秒 11時08分11秒 ?
Y 11時08分09秒 11時08分19秒 ?
Z 11時08分13.5秒 11時08分25.0秒 ?
地点Xを確認する11−4=7秒です。
地点Yを確認する19−9=10秒です。
地点Zを確認する25.0−13.5=11.5秒です。
最も長い地点を確認する地点Zです。11.5秒で、Xの7秒、Yの10秒より長くなります。

転用する:縮尺が違う資料を見抜く

地点DとEの波形で、P波とS波の間がどちらも横に4目盛りだったとします。

  • 地点D:一目盛り1.5秒
  • 地点E:一目盛り2秒

地点Dの時間差は、

1.5秒 × 4区間 = 6秒

地点Eの時間差は、

2秒 × 4区間 = 8秒

です。

見た目の区間数は同じでも、Eの方が2秒長いと分かります。逆に、図の横幅が違って見えても、時刻に直した結果が同じなら、初期微動継続時間は同じです。

初めて見る資料では、まず「同じ尺度で描かれている」と決めつけないことが重要です。

比べてよいもの・まだ決められないもの

このレッスンの資料だけで比べてよいものは、P波到着時刻、S波到着時刻、初期微動継続時間です。

次の判断には追加の根拠が必要です。

  • 波形が高いから震源に近い
  • P波が最も遅いから震源から最も遠い
  • 初期微動継続時間が長いほど遠い

最後の関係は次のセクションで学びます。先に結論だけ暗記するのではなく、観測地点までの距離と時間差を表・グラフで確かめます。

誤答を原因から直そう

誤答1:P波が最も遅い地点を「時間差が最長」とする

比べる量が違います。初期微動継続時間は各地点でS波時刻−P波時刻を求めてから比べます。

誤答2:波形の横幅だけで比べる

横軸の縮尺が地点ごとに違う可能性があります。一目盛りを秒に直してから比べます。

誤答3:S波の最大の山を到着時刻にする

到着時刻は、大きな揺れが始まった境目です。最大振幅の時刻ではありません。

誤答4:表へ移すときP波とS波の列を逆にする

記入後、すべての行でP波到着時刻<S波到着時刻か確認します。逆なら転記か読取りを見直します。

誤答5:波形の高さだけで距離を決める

振幅には地震の規模、地盤、装置の倍率なども関係します。この資料だけでは決められないと判断することも、資料を読む力です。

初見資料への説明

三地点の記録を渡されたら、次の順で説明できるか試してください。

「地点ごとに横軸の一目盛りを確認し、P波とS波の到着時刻を読む。S波−P波で時間差を求め、表の同じ列にそろえる。その後、設問が求める値を縦に比べる。」

この説明を資料を見ずに言えたら、六つのレッスンの力が一つの手順につながっています。

このレッスンの理解チェック

確認1:複数地点を最初から頭の中で比べず、一地点ずつ読むのはなぜ?P波・S波・縮尺などの情報が混ざるのを防ぎ、同じ手順で数値にできるからです。
確認2:横幅が同じなら時間差も同じ?限りません。一目盛りの秒数が同じか確認する必要があります。
確認3:Aが6秒、Bが9秒、Cが12秒なら、最長と最短の差は?12−6=6秒です。
確認4:全行で行う簡単な検算は?P波到着時刻がS波到着時刻より前になっているか確認します。
確認5:この段階で波形の高さだけから震源までの距離を決めてよい?決められません。振幅には複数の条件が関係するため、追加の根拠が必要です。

セクションのまとめ

このセクションでは、次の流れを完成させました。

  1. P波とS波が異なる速さで届くため、揺れが二段階になると理解する。
  2. P波とS波の性質を区別する。
  3. 波形から二つの到着点を見分ける。
  4. 時刻軸から到着時刻を読む。
  5. 初期微動継続時間を計算する。
  6. 複数地点の値を表に整理して比較する。

次のセクションでは、この表を使い、初期微動継続時間と震源からの距離の間にどのような関係があるかを考えます。

クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。