調査対象と偏り:印象に流された判断を直す
このレッスンの役割
調査の読み取りの誤りは、人数で代表性を判断する、自由参加を全体の声と読む、質問文を見ない、偏りがあれば全部捨てる、の四つに分けられます。ここでは、それぞれを型に分け、直します。
今回の中心技能は、調査の読み取りの誤りを四つの型のどれかで言い、直せることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「ネットの投票で五万人が答えて、九割が反対だった。五万人も答えたのだから、世論は反対だ。」
五万人は多いですが、ネットの投票は「自分から答えた人」で、その話題に強い関心(多くは不満)を持つ人が集まります。型①「人数で代表性を判断する」と型②「自由参加を全体の声と読む」が重なっています。「投票した五万人の中では九割が反対」まで。
誤りの四つの型
| 型 | 起きていること | 例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 人数で代表性 | 多ければ全体を代表すると思う | 五万人だから世論 | 選び方(無作為か)を見る |
| ② 自由参加を全体の声 | 自分から答えた人の結果を全体に広げる | ネット投票、街頭の声 | 「回答した人の中では」に限る |
| ③ 質問文を見ない | 結果の数値だけ使う | 「無駄遣いの図書館は必要か」の結果を引用 | 一次情報で質問文と選択肢を確かめる |
| ④ 偏りで全部捨てる | 偏りがあれば使えないと決める | 図書委員の結果は無意味 | 範囲を限れば使える(図書委員の中では) |
型①を直す:人数と選び方
| 調査 | 人数 | 選び方 | 代表性 |
|---|---|---|---|
| ネット投票 | 五万人 | 自由参加 | 低い |
| 無作為の電話調査 | 千人 | 無作為 | 高い(回答率による) |
| 全校アンケート | 五百人(全員) | 全員 | 高い |
代表性は選び方で決まり、人数は精度(ぶれの小ささ)に関わります。
型②を直す:自由参加の見分け方
| 合図 | 種類 |
|---|---|
| 「投票にご協力ください」「アンケートはこちら」 | 自由参加 |
| 「街頭で聞いた」「来場者に聞いた」 | その場にいた人(自由参加に近い) |
| 「無作為に抽出」「住民基本台帳から」 | 無作為 |
| 「全生徒を対象に」「全世帯に配布」 | 全員(回答率を見る) |
型③を直す:質問文の確認
| 結果だけ | 質問文を見ると |
|---|---|
| 八割が図書館は不要 | 「税金の無駄遣いである図書館は必要か」→誘導 |
| 七割が校則の強化に賛成 | 「子どもの安全のために校則を厳しくすべきか」→誘導 |
| 六割が住み続けたくない | 「住みたくない」二十五%+「どちらとも言えない」三十五%→合算 |
二次情報の結果を使う前に、一次情報の質問文と選択肢を見ます。
型④を直す:範囲を限って使う
| 調査 | 偏り | 使える範囲 |
|---|---|---|
| 図書委員十二人 | 読書好きの集団 | 「図書委員の中では読書好きが多い」 |
| 駅前の百人 | 通行人 | 「平日昼の駅前の通行人の中では」 |
| SNSの百二十人 | 利用者・関心者 | 「SNSで回答した人の中では」 |
偏りは「使えない」ではなく「範囲が狭い」です。
例題:どの型か
「アプリの利用者一万人の調査で八割が『便利』と答えた。だから中学生の八割はこのアプリを便利だと思っている。」
型①+②。利用者(使い続けている人)は便利だと思う人が多い。「利用者の中では八割」まで。
「『子どもの安全のために校則を厳しくすべきか』に七割が賛成した。保護者は校則強化を望んでいる。」
型③。「安全のために」が誘導。中立な質問での結果が必要。
よくある間違い
「無作為」と書いてあれば安心する
無作為でも回答率が低ければ、回答者の偏りがあります。回答率を見ます。
質問文が「読めない」から見ない
一次情報の概要に質問文は載っています。短くても必ず確かめます。
偏った調査を「うそ」と書く
結果は事実です。範囲が狭いだけ。「〜の中では」で使います。
自分で確かめよう
確認1:調査の読み取りの誤りの四つの型
人数で代表性、自由参加を全体の声、質問文を見ない、偏りで全部捨てる。
確認2:「五万人が答えたネット投票で九割が反対」の使える範囲
投票した五万人の中では九割が反対、まで。
確認3:人数と選び方は、それぞれ何に関わりますか
選び方は代表性(全体に広げられるか)、人数は精度(ぶれの小ささ)。
まとめと次の一歩
調査の読み取りの誤りは、人数で代表性、自由参加を全体の声、質問文を見ない、偏りで全部捨てる、の四つに分けられます。選び方を見る、範囲を限る、質問文を確かめる、「〜の中では」で使う、で直します。
次のレッスンでは、複数の調査を比べる入試形式の問題で、四つの問いと四つの型を通して使います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。