謙譲語の基本:動作主と向きで選ぶ
このレッスンの役割
前のレッスンで、謙譲語の働きと条件を知りました。ここでは、文中の動詞を謙譲語にするとき、動作主と向きの確認から形の選択までを一つの手順に決めます。尊敬語の手順と並べると、段階2「向き」の確認が増えています。
今回の中心技能は、「動作主が自分側かを確かめる → 動作が目上に向かうかを確かめる → 特別な形があれば使い、なければお〜するを作る → 丁寧語で文末を整える」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
(生徒が先生に)明日、私が先生の教室に行って、資料を見せます。
二つの動詞を手順で直します。「行く」:動作主は私、先生の教室に向かう、特別な形「伺う」、「伺って」。「見せる」:動作主は私、先生に向かう、特別な形はないので「お見せする」、「お見せします」。「明日、私が先生の教室に伺って、資料をお見せします。」
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 「見せる」の場合 |
|---|---|---|
| 1 | 動作主が自分側かを確かめる | 私 → 自分側 |
| 2 | 動作が目上に向かうかを確かめる | 先生に → 向かう → 謙譲語 |
| 3 | 特別な形があれば使い、なければ「お〜する」を作る | なし → お見せする |
| 4 | 丁寧語で文末を整える | お見せします |
段階2:向きの判定
| 動詞 | 向かう相手 | 判定 |
|---|---|---|
| 渡す、聞く、会う、訪ねる、見せる、送る | 相手あり | 謙譲語にできる |
| 走る、寝る、起きる、勉強する | 相手なし | 謙譲語にしない(丁寧語のみ) |
| 行く、言う、する、いる | 相手の有無で形が変わる | 相手あり:伺う・申し上げる/相手なし:参る・申す・いたす・おる |
段階2で「相手なし」なら、段階3は飛ばして丁寧語だけにします。
段階3:特別な形と「お〜する」
| 動詞 | 特別な形 | お〜する |
|---|---|---|
| 行く・訪ねる | 伺う | ― |
| 言う | 申し上げる | ― |
| 見る | 拝見する | ― |
| 聞く | 伺う、拝聴する | お聞きする |
| 会う | お目にかかる | お会いする |
| もらう | いただく | ― |
| 渡す | ― | お渡しする |
| 見せる | ― | お見せする |
| 送る | ― | お送りする |
| 説明する | ― | ご説明する |
| 連絡する | ― | ご連絡する |
漢語には「ご」(ご説明する、ご連絡する)。
段階3の別形:〜ていただく
相手の動作を自分が受けるときは、「〜てもらう」を「〜ていただく」にします。
| 普通 | 謙譲語 |
|---|---|
| 先生に教えてもらう | 先生に教えていただく |
| 先生に見てもらう | 先生に見ていただく |
| 先生に来てもらう | 先生に来ていただく(お越しいただく) |
動作主は先生ですが、「もらう」のは私なので謙譲語です。
例題:向きで形が変わる
(生徒が先生に)私は来週、京都に行きます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 私 → 自分側 |
| 2 | 京都(目上の人ではない)→ 相手なし |
| 3 | 相手なしの「行く」→ 参る |
| 4 | 参ります |
「伺います」は誤り。京都に目上がいるわけではないので「参ります」。
(生徒が先生に)私は来週、先生の研究室に行きます。
段階2で先生に向かう → 「伺います」。
段階4:文末の整え方
| 謙譲語 | +丁寧語 |
|---|---|
| 伺う | 伺います |
| 申し上げる | 申し上げます |
| 拝見する | 拝見します |
| いたす | いたします |
| お渡しする | お渡しします |
| いただく | いただきます |
よくある間違い
段階2を飛ばして「伺う」を使う
「東京へ伺います」は、東京に目上がいなければ「参ります」。
相手のない動作に「お〜する」を作る
「お走りします」「お起きします」は誤り。
「〜ていただく」の動作主を自分だと思う
「教えていただく」の教える人は先生。「もらう」のが私。向きを図にして確かめます。
自分で確かめよう
確認1:「私が先生に資料を送る」を四段階で
私 → 先生に向かう → 特別な形なし「お送りする」→ お送りします。
確認2:「私は来週、京都に行きます」の謙譲語
参ります(向かう相手がないので「伺います」ではない)。
確認3:「先生に教えてもらう」の謙譲語
先生に教えていただく。
まとめと次の一歩
手順は、動作主が自分側か、動作が目上に向かうか、特別な形かお〜するか、丁寧語で文末、の四段階です。向かう相手の有無で「伺う/参る」「申し上げる/申す」が分かれます。
次のレッスンでは、謙譲語でよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
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