このレッスンの役割
前のレッスンでは、産業成長の裏で労働者が負担を負ったことを学びました。ここでは、工場や鉱山の外に被害が広がる公害問題を考えます。
銅山の利益と被害
栃木県の足尾銅山では、近代的な技術で銅の生産が増えました。銅は電線や機械に使われ、重要な輸出品でもありました。
一方、鉱山から出た有害物質が渡良瀬川へ流れ、下流の農地や漁業に被害を与えました。煙による山林被害も起こり、洪水が被害を広げました。
銅の増産 → 輸出と企業利益 → 鉱毒・煙 → 川・田畑・山林へ被害 → 農民の生活が脅かされる
利益を得る人と負担する人
| 利益・目的 | 被害・負担 |
|---|---|
| 企業が銅を生産・販売 | 流域農民の作物被害 |
| 国家が外貨や税収を得る | 健康・飲み水・漁業への影響 |
| 近代産業に銅を供給 | 村や自然環境の破壊 |
同じ場所で利益と被害が発生するとは限りません。上流の生産が下流へ負担を押し出します。
田中正造の行動
栃木県選出の衆議院議員田中正造は、議会で鉱毒問題を追及しました。議員を辞職した後、天皇へ直訴しようとするなど、被害救済を訴え続けました。
政府は治水工事などを進め、谷中村を遊水池にする計画を実施しました。しかし鉱山の操業を優先し、被害住民の移転を伴った対応には批判もあります。
公害問題の構造
公害は「悪い工場が汚した」だけで終わりません。
生産を奨励する政府 + 利益を得る企業 + 被害を受ける住民 + 被害を運ぶ川や空気 → 利害の対立 → 規制・補償・操業をめぐる政治問題
確認1:足尾鉱毒事件で被害を運んだ川は何ですか。
渡良瀬川です。
確認2:田中正造はどのように問題を訴えましたか。
衆議院で政府を追及し、議員辞職後には天皇への直訴を試みるなどしました。
確認3:公害を利益と負担で説明しましょう。
企業や国家が銅生産・輸出の利益を得る一方、有害物質による農業・健康・環境の負担を流域住民が負いました。
次のレッスンへ
産業化は都市だけで進んだのではありません。次は、農村が労働力・原料・税を供給しながら、格差を広げた仕組みを学びます。